Q1で使用したソフトタイヤを水で洗ったり、水の入った桶でクールダウンさせてQ3で使用するパターンがセオリーとなった。 2スペック目のソフトタイヤ導入で、とにかく展開が目まぐるしく、濃密な内容となったスーパーフォーミュラ第4戦ツインリンクもてぎの予選。上位の3台を軸に、アプローチが異なった予選セッションのポイントを振り返る。
予選でポールポジションを獲得したITOCHU ENEX TEAM IMPULの関口雄飛はQ3でソフトタイヤのニュータイヤ、2番手のP.MU/CERUMO・INGINGの石浦宏明はソフトのユーズドタイヤ、3番手のDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの野尻智紀はミディアムのニュータイヤと、Q3最後のアタックが三者三様になったところに、今回の予選の複雑さと難しさが凝縮されている。
ポールの関口はQ1をミディアムタイヤでクリアしたのが大きな勝因となった。チームメイトのJ-P.デ・オリベイラとともに、インパルの2台だけがQ1最後のアタックでミディアムタイヤを選択、他の17台がソフトのニュータイヤを選ぶ中、ギャンブルにも見えた選択だったが、終わって見ればこれが大英断となった。関口も「戦略に幅が広がり、予選に対してもいろいろなアイデアを盛り込めるようになった。これが僕にとっては良い方向へ働きましたね」と今回の2スペックでの予選を振り返る。
他のライバル陣営が予選Q1最後のアタックでミディアムを選べなかったのは、事前に富士で行われたテストでソフトとミディアムの差が約1秒近くあったため。しかし、今回のもてぎでは路面温度が40℃にも上がったこともあり、実際には2種類のタイヤのタイム差は0.4~0.5秒と、当初の想定よりも小さかったことが、インパルのミディアムでのQ1突破を後押しした。予選後、「(Q1で)ミディアムを選んでいれば……」「(ミディアムでQ1突破は)行けたと思う」と悔やむライバル陣営のエンジニアのコメントは、心からの本音だったに違いない。
2番手の石浦のパターンは、事前に想定されたセオリーどおりの展開だった。Q1の最初にミディアムタイヤでアタックして、Q1最後はソフトのニュータイヤを選択。そしてQ2でソフトのニュータイヤ、Q3でソフトのユーズドタイヤを選んだが、石浦にとってはQ1でソフトタイヤを装着しながらミディアムのインパル勢の2台のタイムに及ばなかった。
「金曜の占有走行でもトップ(J-P.デ・オリベイラ)とのタイム差(約1秒差)が大きくてショックでしたが、Q1でまた衝撃を味わいました。非常に悔しい予選でした」と石浦は2番手獲得にもかかわらず、インパル勢とのパフォーマンス差を痛感する結果となった。
■戦略の幅が広がった2スペックでの予選。決勝日はまた難しい展開に……
その一方、Q2までは石浦と同じながら、Q3でミディアムタイヤを選んだのが予選3番手の野尻だった。「Q3は自信を持って思い切り行くしかなかった。上位のふたりはソフトタイヤでのタイムで、僕はミディアムでのアタック。ミディアム勢の最上位につけることはできたので、満足はしていませんが最低限はクリアできたのかなと思っています」と野尻。
Q3では野尻の他に国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)、ジェームス・ロシター(KONDO RACING)がミディアムのニュータイヤでQ3に臨んだ。このもてぎで、ユーズドのソフトタイヤのデータがない中、ドライバー側がソフトタイヤの軟らかいコンパウンドよりも、硬めのコンパウンドでかっちりした乗り味を好んだ結果と言える。
今回注目された2スペックによる予選、結果からすればタイヤ選択、戦略の多様性が増し、新鮮で濃厚な内容となった。もちろん、ほとんどのチームでソフトタイヤの特性をつかんでおらず、ミディアムとのタイム差の把握も、クルマのセットアップも手探りの中で行われたことが戦略の幅を広げた大きな要因であることは間違いない。
いずれにしても、今回の2スペックタイヤで重要なのは、明日の決勝レースでどのような作用を及ぼすか。ソフトタイヤがミディアムよりも大きくタレて、今回の予選のようにドライバーやチームにオーバーテイクや戦略の選択肢が増えるような展開になれば、この2スペック目のタイヤ導入は大成功と言える。
その明日の決勝レースはドライコンディションが予想されているが、午前中は雨の予報。どのチームも燃料満タンの重いクルマで、ソフトタイヤのロングランのデータが得られないまま決勝に挑むことになりそうで、チーム&ドライバーはまた、難しい局面を迎えることになる。