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TWEEDEES、充実の2ndアルバムを経て起きた“革新” 期待膨らんだ『ショウ』レポート

2016年08月20日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

ワンマンライブ『ショウほど素敵な商売はない vol.2』の様子。(写真=吉田進吾)

 沖井礼二と清浦夏実によるバンド・TWEEDEESが8月10日、渋谷 TSUTAYA O-WESTで行なったワンマンライブ『ショウほど素敵な商売はない vol.2』は、バンドの明確な成長と2人のパワーバランスの変化を感じさせる一夜となった。


 この日のライブから遡ること約20日前、TWEEDEESは2ndフルアルバム『The Second Time Around』をリリース。バンドはこれまで、プロデューサーとしての顔も持つ沖井が楽曲における主導権を握り、清浦夏実という稀代のシンガー・フロントマンをいかにして立たせるか、そのなかでいかに楽曲やプレイングで沖井が存在感を発揮するかが特徴だったといえる。さらに1点付け加えるとすれば、そこにCymbalsの幻影を重ね合わせているリスナーが少なくなかった。


 さらに時計の針を戻す。2015年10月21日に会場を同じくして開催され、北川勝利(ROUND TABLE)との共演や、ミト(クラムボン)の客演が話題になった『Victoria's Circus』で清浦が発した「みんな、Cymbalsのこと大好きだよね! 私も大好き! でもね、私が忘れさせてあげる! Cymbalsよりもほかのバンドよりも、TWEEDEESをもっともっといいバンドにしていくから!」という鳥肌モノの決意表明から約1年。『The Second Time Around』は清浦も積極的に楽曲制作に参加し、沖井らしさを残しながらもこれまでよりも間口の広い、ポップスとしての強度を持ち、あの日の決意への回答でもある作品が完成した。


 では、その回答ともいうべき“TWEEDEESらしさ”とは何か。場面は8月10日のライブへと移る。パフォーマンス・楽曲面でこの日目立ったのは、2ndアルバムの楽曲が加わったことによる「幅の広がり」といえるだろう。ライブ序盤で初披露となった「PHILLIP」は、インドネシアのikkubaruをゲストに迎えた楽曲だが、この日は沖井のコーラスもなく、清浦1人で歌い上げられた。また、「バタード・ラム」や「友達の歌」「ムーンライト・フラッパー」など、『The Second Time Around』にはR&Bやファンク的な要素や、映画音楽・ミュージカルの舞台音楽風の楽曲など、ライブでのパフォーマンスを含め“演劇性”を感じさせるものが多くみられる。彼らの開演前BGMとして映画音楽が使われることも少なくないということからも、それは確立しようとしている“TWEEDEESらしさ”の一端を担う要素なのかもしれないと推察できる。


 彼らのオリジナリティという部分においては、MCにも言及しておく必要がある。TWEEDEESにはライブを見た者にしかわからない、「沖井と清浦の夫婦漫才のような掛け合い」という魅力があり、時間をかけて舞台の上で板についてきた一種のパフォーマンスだ。しかし、この日のライブでは、2人のパワーバランスにある種の変化を感じた。具体的にどことは言わないが、MCでついお喋りが過ぎてしまう沖井に対する清浦のハンドリングが、以前に見たときよりも圧倒的に手慣れたものになっていた。それほどまでに、『The Second Time Around』の影響は大きいのかと感じる。


 ライブ終盤、沖井はMCで「早く3rdアルバムを出したい」と、今のTWEEDEESが楽しくて仕方ないといった表情で笑った。すでに公開されている他サイトのインタビューでは、すでに3rdアルバムの構想は固まっているという。先述した開演前のBGMにソウル・ファンク風の楽曲が多く使われるという変化がみられたのは、ひょっとすると次作へと向かううえでのヒントなのかもしれない。TWEEDEESの『ショウほど素敵な商売はない vol.2』は、たどり着いた現在地の充実を味わいつつ、そうして次への期待も膨らませてくれるショウだった。(中村拓海)