2016年08月20日 08:41 弁護士ドットコム
「残業や休日出勤しようとしないお局様。 みんなあなたと違って家族や恋人がいるんですよ。 お盆は里帰りや旅行があるんですよ」。ネットの掲示板で、そんな不満をこぼしている投稿が話題となった。
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投稿者の職場には、未婚で子どもがおらず、長年勤務している女性社員がいる。彼女は、残業を嫌がり、他の人が有給を取得している日程であっても、自分も気にせず有給を取得しようとするのだという。
投稿者は、親戚づきあいや恋人との予定などがある人たちのために、残業や有給などに関して配慮すべきだと考えているようだ。「子どもや恋人が誕生日の人がいたら進んで残業引き受けて早く帰らせる立場なのに、 反対に仕事押し付けて残業させるのはどうしてですか?」と疑問を投げかけていた。
投稿者は残業を拒否したり、有給を取得するためにはそれなりの理由が必要だと考えているようだが、そもそも、残業を拒否したり、有給を取得するために「理由」は必要なのだろうか。「子どもや家族がいる方を優先してほしい」という理由で、会社が有給の取得日程を変更することは認められるのか。小沢一仁弁護士に聞いた。
「労働時間は、1週40時間、1日8時間を超えてはならないことが原則です(労働基準法32条1項、2項)。そのため、投稿者の勤務先の雇用形態によっては、投稿者の『問題提起』自体が的外れである可能性があります。
例外的に1日8時間を超える勤務が許されるとしても、残業の是非は『対会社』との問題です。拒否する際に他の従業員のために理由を述べる必要はないと思います。ましてや、他の従業員の生活に配慮して残業せよということにはならないと思います」
小沢弁護士はこのように指摘する。投稿者の有給休暇に関する指摘も同じなのだろうか。
「有給休暇は、原則として労働者が請求する時季に与えなければなりません。例外的に請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は他の時季に有給を与えることが出来るとされています(法39条5項)」
有給休暇を取得するために、「理由」は必要なのか。
「有給休暇は労働者が原則自由に取得できるもので、取得の理由を説明する必要はありません(参考:最高裁昭和48年3月2日判決)。
以上のとおり、投稿者の意見は、法的には通らないと思われます。とはいえ、難しいことかもしれませんが、上長を交え話し合いの機会を設けるなどして、相互の理解を深めることが重要だと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
小沢 一仁(おざわ・かずひと)弁護士
2009年弁護士登録。2014年まで、主に倒産処理、企業法務、民事介入暴力を扱う法律事務所で研鑽を積む。現インテグラル法律事務所シニアパートナー。上記分野の他、労働、インターネット、男女問題等、多様な業務を扱う。
事務所名:インテグラル法律事務所