2016年08月19日 10:52 弁護士ドットコム
日本人選手の活躍が日々、伝えられているリオデジャネイロ五輪。2020年の東京大会に向けて、過去最多38個のメダルを獲得した前回大会以上の成績が期待されている。
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選手たちの励みの1つが「報奨金」の存在だろう。メダリストには、日本オリンピック委員会(JOC)から金だと500万円、銀には200万円、銅100万円の報奨金が贈られる。金メダルへの報奨金は今大会から200万円増えている。
このほか、競技団体や企業が独自に出す報奨金もある。たとえば、陸上競技だと日本陸連から金メダリストに2000万円、銀に1000万円、銅に800万円が別途贈呈される。
陸上で金メダルをとると、2500万円以上の金額がもらえる計算だが、報奨金は課税対象なのだろうか。李顕史税理士に聞いた。
「実はオリンピックの報奨金は日本では歴史が浅く、1992年のアルベールビル冬季五輪が最初です。
かつてのオリンピックはアマチュア選手が主体で、お金を得るのはけしからんという世論があったようです。しかし、1974年に五輪憲章から『アマチュアリズム』の文字が消え、1988年から各国のプロ選手が参加するようになりました。このような背景から、日本でも選手に報奨金を支給する世論が形成されていきました」
――報奨金に税金はかかる?
「現在は非課税です。ただし、もともとは課税対象でした。たとえば、バルセロナ夏季五輪で一躍時の人になった金メダリスト中学生(当時)の岩崎恭子さん。読売新聞では、『五輪報奨金に課税!? 金メダルの岩崎恭子さんは9万円/国税庁』(1993年1月20日付)と驚きをもって報じられました。
今のように非課税になったのは、1994年の税制改正によってです。考え方は、個人で購入した宝くじが当選しても、全額非課税とされているのと同じです。ちなみにノーベル賞の賞金も非課税とされ、法律にも書かれてます」
――競技団体やスポンサーからの報奨金は?
「競技団体からの場合は、2010年の税制改革で非課税となりました。ただし、あらゆる競技団体からの報奨金が非課税になるわけではなく、JOC(日本オリンピック委員会)加盟団体からのものに限ります。
一方、選手のスポンサーや所属企業からの場合は、課税対象とされています。メダルの報奨金は『一時所得』となり、得た金額の50%が課税対象となります」
――この後、開幕するパラリンピックの報奨金はどう考えられる?
「パラリンピックの報奨金もオリンピックと同様です。実は、スポーツの報奨金が非課税なのはこの2つに限定されています。
2011年のサッカー女子ワールドカップでなでしこジャパンが優勝しましたが、その時の報奨金は制度上、課税されたものと考えられます。個人的にはオリンピックと同等の快挙なので、非課税にしても良いのではないかと考えています」
【取材協力税理士】
李 顕史(り・けんじ)税理士
李総合会計事務所所長。一橋大学商学部卒。公認会計士東京会研修委員会副委員長。東京都大学等委託訓練講座講師。あらた監査法人金融部勤務等を経て、2010年に独立。金融部出身経歴を活かし、経営者にとって、難しいと感じる数字を分かりやすく伝えることに定評がある。また銀行等にもアドバイスを行っている。2016年6月に「各種法人の?に答える 現場が知りたいマイナンバー実務対応」(清文社)を刊行。
事務所名 : 李総合会計事務所
事務所URL:http://lee-kaikei.jp/
(弁護士ドットコムニュース)