スーパーフォーミュラもてぎ戦で実施される『ドライ路面用タイヤ 2スペック制』。この試験的新ルール導入によって、予選における戦い方がどのように変化するのかを考えてみよう。
なお、あらかじめお断りしておきたいのだが、なにしろスーパーフォーミュラにとって革新的なトライであるだけに、レース直前になんらかの規則変更や内規の成立などによって、たとえば「予選Q1はこちらのスペックで」というような決まりごとが生まれる可能性もなくはない。
あくまでも8月上旬時点での2スペック制の規則背景を前提にした話であることはご承知おきいただくとして、まずはドライタイヤの使用セット数の確認から。レースウイークを通じて各車6セット使用可、前戦からの持ち越し(ミディアム)が2セットで、新品が4セット。
今回のもてぎ戦では新品の内訳がミディアム、ソフト各2セットということになる。そして予選はQ1~Q2~Q3の3段階ノックアウト方式で、19→14→8台と絞られていく。
予選で大きな武器となるソフト新品が使えるのは2回、しかし予選は3セッションある。そしてスーパーフォーミュラのタイム差はつねに僅差で、時に100分の1秒が明暗を分けることさえあるほど。ソフト(S)とミディアム(M)のラップタイム差が1秒前後あると見込まれる状況下、ミディアムでQ1を確実に突破することは、よほどマシンセッティングが決まっていないと難しいのではないか。
つまり、Q1~Q2を「S~S」という新品タイヤ投入順序で戦うことが基本軸になると予想される。富士テストでソフトタイヤを試したあとのドライバーやエンジニア、チーム首脳たちの見解も、ほぼそこに行き着くようだった。
金曜の練習走行と土曜朝のフリー走行で「セットアップ的にスピード面で明確なアドバンテージがある」と得心できた陣営は、予選Q1をミディアムで乗り切れるという判断をしてくる可能性もあるだろう。
また、ソフトとミディアムのタイム差は1秒よりずっと小さい、と読んでいる陣営なら、Q1へのミディアム投入の判断基準は下がることにもなるが、いずれにしてもミディアムでのQ1突破が実現できれば、Q3にソフトを温存でき、ポールポジション争いに向けて優位を築けるだろう。
一方でセットアップに苦しむ陣営は、「とにかくQ2進出だけは果たしたい」と、セッション時間が20分と長いQ1でソフトを2セット投入する策に出ることもあり得るか。ただ、別の要素がこのあたりの事情を大きく変える可能性もある。
第4戦もてぎはホンダとトヨタのエンジンが後半戦仕様に切りかわる予定のレースなのだ。
今季前半、ホンダとトヨタはほぼ互角のパフォーマンスを発揮していたが、もし後半戦仕様投入でどちらかが大幅にスピードアップするような事態が生じれば、一方の側にとってはミディアムでのQ1突破がそう難しくはなくなる、というような展開もあり得ないことではない。
とにかく金曜の練習走行と土曜朝のフリー走行、ここでのタイム動向から一瞬も目が離せない攻防となるのは必至である。
仮にS~SでQ1~Q2突破を果たした場合だが、Q3ではミディアム新品を使う他に、ソフトのユーズドを使うという選択肢もありそうだ。このあたりはQ3進出が予想される上位陣営の見解も分かれるところのようで、要は当日のコンディションと総合的な状況次第。
Q3に進んだ精鋭8騎がそれぞれどういうタイヤを履いて最後のポール争いに臨むのか、結果的には皆同じ選択になる可能性も含めて、興味深い焦点となるだろう。
ちなみにもてぎでは各陣営、予選本番までソフトは履けない、と考えておくべきだ。2セットしかなく、新品のメリットを予選で発揮させることを優先した場合、土曜朝のフリー走行でソフトを試すことはできないと思われる。
セットアップ傾向によっては、まったくの新品よりもスクラブをした方が予選に向けていい、と判断した陣営が“皮むき”程度のソフトでの走行を朝に済ませることはあるかもしれないが、ソフトで走り込むという行為には現実味がないだろう。
この「ソフトはぶっつけ本番濃厚」という要素もまた、戦局の変動を予感させてくれる。