トップへ

the GazettEがバンドの真髄を見せつけた夜ーースタンディングツアー新木場公演をレポート

2016年08月17日 18:21  リアルサウンド

リアルサウンド

the GazettE(写真=山内洋枝 (Hiroe Yamauchi)<PROGRESS-M>)

 サウンド、映像、アート&デザイン…… the GazettEに携わるすべてを網羅したプロジェクト『PROJECT:DARK AGE』は2015年夏、<1ST MOV.>アルバム『DOGMA』で幕を開けた。漆黒に包まれた重厚な外観と、硬質で鋭利な音ーー。その荘厳たる世界観は『DOGMATIC-UN-』『DOGMATIC-DUE-』と題されたコンセプチュアルなツアーで進化を遂げていく。そして、初上陸となったアメリカをはじめ、アジア、ヨーロッパと廻った海外ツアーを終えた彼らの次なる<11TH MOV.>は、スタンディング形式のライブハウスツアー。7月からはじまったこの『STANDING LIVE TOUR 16 DOGMATIC -ANOTHER FATE-』は8月2日、新木場STUDIO COASTでセミファイナルを迎えた。演出要素を削ぎ落とし、音に徹したライブはthe GazettEというバンドの真髄を見せつけた夜になった。


(参考:the GazettE、新作『UNDYING』とキャリアを語る「よくわからない自信があったから、ここまで続いたのかも」


 SEの「NIHIL」が鳴り、悲鳴のような大歓声に迎えられてメンバーが登場。優美なチェンバロの音色が響く中、麗(Gt)がゆっくりと低音弦のリフを刻みだした。全身漆黒を纏ったRUKI(Vo)が獣の嘶きのごとく咆哮すると、一気に轟音が襲いかかってくる。「DOGMA」で宴の火蓋は切って落とされた。地を這うようなグラインドとグルーヴが場内をのたうち回り、フロアを揺らす。「RAGE」「DAWN」と、次々稲妻のごとき獰猛なサウンドを轟かせ、観る者を肉薄し、叩きのめしていくよう。序盤からthe GazettEの真骨頂で攻めていく。


 強靭なリズムを打ち鳴らす戒(Dr)。どっしりと重心を低くしながらボトムを支えるREITA(Ba)。荒々しくもソリッドなサウンドを繰り出す、葵(Gt)。華麗に舞い、ハードに奏でる麗(Gt)。哮り狂うグロウルと妖しくも艶やかな歌声を巧みに使い分けていくRUKI(Vo)。5人が導く黒き豪放の音の洪水に飲み込まれ、フロア一面に激しい大波のようなヘッドバンキングが乱れる。


 デジタルビートとヘヴィサウンドの融合、「DERANGEMENT」「VENOMOUS SPIDER’S WEB」、変則的な楽曲展開の「BIZARRE」へと、間髪入れずにボルテージを上げる。


 the GazettEはヘヴィロックを基調としながらも、様々な音楽を追い求めてきた。デジロックやEDMといった、最先端の音を積極的に取り入れたサウンドプロダクトも彼らの十八番である。そうした派手な印象を持ち合わせながらも、『DOGMA』では原点回帰とも言える、ダークな世界観とより研ぎ澄ました凶暴性をシンプルなサウンドで表現した。『PROJECT:DARK AGE』から『DOGMA』の世界観を壮大に体現したホールツアーを終えた後、演出要素を排除したライブハウスツアー、というのも興味深いところ。ただ、機材面も環境においても国内ほど融通の利かない海外ツアーは、よりバンドサウンドを強固なものにしており、今回はそれを堪能するにふさわしいライブであることは言うまでもないだろう。


 流麗なメロディと轟音が交錯する「DEUX」、RUKIが座り込みながら、なまめかしい歌声を響かせた「OMINOUS」。一音一音確かめるように打ち込む戒のスネアと天鵞絨のような麗の旋律がミラーボールの下に響いた。


 the GazettEの音楽は決して大衆性のあるものとは言い難い。しかしながらマニアックに偏るわけでもなく、日本古来の叙情的な趣をも感じられる。国内外ロックのコアな部分を自分たちなりに咀嚼し、徹底的なこだわりを見せながらもどこか親しみやすいものへと昇華させていく。日本国内のみならず、海外からもthe GazettEが支持されるのはそうした魅力に他ならない。


 「声聞かせてくれ!」RUKIの煽りで始まった「INCUBUS」からの後半戦。何度もシャウトするRUKIの声に全身全霊のヘッドバンキングで応えるオーディエンス。「グチャグチャになっちゃえよ!!」激しい煽りに乗せた「HEADACHE MAN」、会場一体の掛け声「UNTIL DIE!!」に導かれた「ATTITUDE」、ブチ上がりのインダストリアルなキラーチューンの猛攻撃にフロアはカオスティックな状態へ。


「やっぱり暴れてナンボだよねぇ、オレらは。全員で掛かって来い!!全員で掛かって来いっ!!!!」


 さらなる煽りでスピードナンバー「SLUDGY CULT」からのラストスパートは「UGLY」「BLEMISH」と畳み掛け、「UNDYING」の壮大でシンフォニックな響きを以って本編は終了した。


 「今日は、良いとか悪いとかじゃなくて、ヤバイ」アンコールに応え、ドラムセットに座った戒がそう語るとマーチングドラムのリズムを刻みだし、後方に“the GazettE“のバックドロップが掲げられる。ヘヴィでグラマラスなナンバー「INSIDE BEAST」だ。


「ホールツアーも合わせると相当なツアーをやってきまして。今日、セミファイナルということで、無事に廻れたことに感謝しています」RUKIが穏やかに口を開いた。


「あと幕張1本やったらしばらく会えなくなってしまうという……、まぁ、フェスとかはあるんですけど。お前ら来るの? いつもアウェイなところに行くんで、みなさんが来てくれたほうが心強いんでね。とはいえ、すっげぇアウェイのほうが自分ら的には盛り上がるという。みんなはthe GazettEの曲を知ってくれてるけど、まったく知らない人の中でやったら、オレらの力量はどんなものかと」


 何かと偏見も多いヴィジュアル系ロックバンド。とくに海外アーティストを主とする国内フェス/イベントでは、歓迎されるとは言い難いのは今も昔も変わらない。そんな中で、the GazettEはSUMMER SONIC、LOUD PARK……、これまでもさまざまなフェスに出演し、観る者を音で捩じ伏せてきた。今年はSlipknot主催の『KNOTFEST JAPAN 2016』への出演も決定している。海外におけるthe GazettEの人気は“Visual-kei” “V-ROCK”といった枠では収めきることが出来ないところまで来ているのだ。


 メンバーとともに会場全員頭を振り乱した「DISCHARGE」、至るところでモッシュとダイブの嵐が巻き起こった「TOMORROW NEVER DIES」で、全編終了した……かに思えた。しかし、客電が点き、終演のアナウンスが流れても、誰一人フロアから出ようとはしない。再び捲き起こるアンコールの声。ステージに三たび現れたダブルアンコール、RUKIの「地獄へようこそ!!」の一声ではじまったのは「関東土下座組合」だ。ステージ上のメンバーもオーディエンスも最後の最後、渾身の盛り上がりを見せた。


「お前ら、超最高!!」RUKIがステージ上のありったけのペットボトルをフロアに投げ、この日の漆黒の宴は終演した。


 この1年かけて行われた<DOGMA>は9月27日の幕張メッセにて、ついにグランドフィナーレを迎える。規格外のフリーライブ、そんな場所でthe GazettEは一体何を見せようとしているのか。


(冬将軍)