2016年08月17日 10:02 弁護士ドットコム
もっと子どもにあわせてほしいーー。離婚調停中の夫から、2歳の子どもとの「面会交流」の頻度を増やすよう求められているという妻が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに投稿しました。
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相談者は面会交流の頻度について、月1回・半日程度を考えています。一方、夫は、もっと回数を増やし、時間も朝から夕方までとすることを希望しています。妻の側は「夫はおむつの替えをしっかりしてくれるのか」「慣れない場所で昼寝ができるのか」といった不安を感じているようです。
相談者は「親権を取るためには、面会交流に寛容でないといけないとも聞きました」と打ち明け、夫の要求に応じるかどうか悩んでいます。夫の要求に応じるべきなのか、小田紗織弁護士に聞きました。
●日本でも広がり始めた「フレンドリー・ペアレント・ルール」
家庭裁判所での「面会交流調停」では、調停委員から月1回を目安に面会交流をするよう促されることが多いです。時間や内容、送迎の方法などは、子どもの年齢や生活リズムに配慮して協議されるのが一般的です。 最近は「フレンドリー・ペアレント・ルール」の考えが広まり始めたように感じます。これは、今回の事例に沿って簡単に説明すると次のような考え方です。
「妻が別居する夫を子の父親として尊重し、責任をもって面会交流の実現に協力できるのであれば、監護権者・親権者として相応しい。協力できないのであれば、監護権者・親権者としては相応しくない」
最近では、離婚訴訟でも、この「フレンドリー・ペアレント・ルール」の考えが背景にあると思われる判決がみられます。
たとえば、母子の面会に寛容な「父」を子の親権者とする一方で、父子の面会に消極的な「母」の親権を認めず、子を監護していた「母」に対して、「父」に子を引き渡すよう命じた判決がありました。
また、離婚の際には「母」が親権者とされたものの、「母」が父子の面会に協力しないことから、家庭裁判所が親権者を「父」に変更したという事案も、少し前に話題になりました。
こうしたケースは、いずれも「フレンドリー・ペアレント・ルール」の考えが背景にはあるようです。ただ、日本で浸透しているとまでは、まだいえないと思います。
私は個人的には、親権をとるのに有利か不利かではなく、ご自身のためにも「面会交流」に寛容になってほしいと思っています(もちろん、もう一方の親による子どもへの虐待が明らかである場合は別です)。
●面会に消極的だと、子どもが不幸になることも
母が父子の面会交流に消極的な背景には、父(夫)に対する悪感情があることが多いようです。
いろいろ理由をいって面会交流に協力しないでいるうちに、子と夫との間に距離ができ、子は夫に会っても泣き出したり、面会を嫌がるようになります。
そうすると、妻は「子どもが嫌がっている」といって、ますます面会に消極的になります。そして、「子どもがこんなに面会を嫌がるのは父が原因だ」と主張します。
その結果、「子に会えない夫が親権に執着し離婚の話し合いが進まない」「離婚は成立したけど快く養育費を払ってくれない」という事態になることがよくあります。養育費以外に経済的援助を求めたくても、もはや関係が悪化しているので期待できないということもあります。
後々になって父子の関係を良好にしたいと思っても、もはや子どもが父親を悪者だと思い込んいる状況では、関係は良好には向かわず、どんどん悪循環に陥ってしまいます。それは子どもにとっても不幸なことです。
もちろん、乳幼児の場合は、授乳や食事、アレルギーのこと、オムツの交換や睡眠のことなど気がかりなことがたくさんあると思います。
そういった心配事や情報は、夫と共有し、面会時間や内容を調整して、夫にきちんと対応してもらうようにすれば良いでしょう。早い段階で考え方を変えて、面会交流に寛容になったほうが、ご自身も楽になると思います。
【取材協力弁護士】
小田 紗織(おだ・さおり)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/