2016年08月16日 18:01 リアルサウンド
2016年7月13日から17日にかけて、ヨーロッパ・チェコ共和国のTRUTNOVという街にて開催されたOBSCENE EXTREME FESTIVAL2016に、筆者がボーカルを務めるDEATH SIDEが出演した。本稿ではその模様をレポートしていきたいと思う。
(関連:ハードコアパンクバンド・DEATH SIDE、熱狂のNY公演をボーカルISHIYAがセルフレポート)
OBSCENE EXTREME FESTIVALというフェスは、1999年からヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、アジアで行なわれている、主にグラインド系やメタル・スラッシュ系が中心として出演するフェスで、2014年と2015年には日本でも開催されている。
最初は小規模のフェスだったようだが、年々出演バンドも増えていき、今ではかなりのビッグフェスになっている。
そうした世界中で行なわれているOBSCENE EXTREME FESTIVALのメインフェスが、ヨーロッパ・チェコで行なわれるフェスなのである。
近年ではグラインドやメタル系だけではなく、日本とヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアでイギリスのDOOM、アメリカと2013年のヨーロッパでブラジルのRATOS DE PORAO、2012年のヨーロッパではアメリカのPOISON IDEA、NEGATIVE APPROACH、2013年のアジアにはインドネシアのMARJINALなども出演し、今年のヨーロッパではイギリスからEXTREME NOISE TERROR、WARWOUNDも出演するなど、パンク・ハードコアのバンドも出演するフェスになってきている。
日本からは昨年チェコで行われたOBSCENE EXTREME FESTIVALにS.O.Bが参加し、MELT BANANA、SPEED NOISE HELL、PALMと、筆者のバンドDEATH SIDEが出演した。(参考:OBSCENE EXTREME FESTIVAL公式ウェブサイト http://www.obsceneextreme.cz/cs)
筆者とベーシストのYOUは、FORWARDのスウェーデン・フィンランドツアーからの合流で、13日にはチェコに到着したのだが、会場のある街TRUTNOVは、首都のプラハから車で約2時間半ほどかかるところにあり、冬のスキー客以外は滅多に観光客が訪れることなどない街のようだ。
その街で夏の5日間、メタルやパンクスが3000~5000人ほど集まるビッグフェスが行なわれるのである。
夜中に到着したためフェスには翌日行ってみたのだが、あいにくの雨模様の中、中止になることなくステージが繰り広げられており、観客もカッパを着たり屋根のある場所にいたりするのだが、さすがに昼間の客席はまばらだった。
観客席の地面も土のためドロドロで、会場内の様々なショップなどのブースに行くにも一苦労だ。
フードショップが立ち並ぶ一角に、テーブルと椅子が置かれた大きなテントスペースがあり、雨の場合はそこでビールなど飲みながらいる観客が多く、その場所でいろいろな人々と交流を深めていると、雨も小降りになっていった。
夕方以降になると、メイン級のバンドではOBSCENE EXTREMEの名にふさわしいクレイジーな盛り上がりを見せており「これがOBSCENE EXTREMEか!」と、ようやくこのフェスの感じが伝わってきた。
会場内で飲食をする場合には、会場専用のチケットを購入する。ここでは、貨幣はユーロとチェコクローネが共に使えるようになっていた。
ふだんチェコの街中でユーロは使えない。このような取り組みが、外国からの来場者を参加しやすくさせているように思えた。
チェコは個人でのビール消費量が世界一と聞いたが、なるほどビールもかなり美味しく、ビールを売るブースでは各メーカーが出店しており、プラスチックのカップを返さずに持っていれば、2杯目から1枚のチケットで飲めるようになっている。
フードはこのフェスのオーガナイザーがビーガン(卵も蜂蜜も乳製品も食べない究極的な菜食主義)のため、全てがビーガンフードだった。
しかし、どれもおいしく食べられる上に出演者にはチケットが配られ、ある程度の飲食は無料でできるようになっていた。
会場内ではほかにもTシャツやレコード、CDなども売っており、観客は飽きることなくフェスを楽しめる。
売っているものはやはりブラスト系やメタル系のものが多かったが、パンク系のものも見られた。
初日深夜にはSMショーのようなものも行なわれていたようで、コスプレの観客が非常に多く、“極限猥褻フェス”という名前なだけあり、下ネタ系のコスプレが多かった。
海外ではメタル系の観客にクレイジーな人間が多く、メタル系の出演者と一緒のライブのときは観客たちも楽しみのひとつだ。日本では感じられない面白さがあるので、海外のメタルシーンに触れる機会があるなら是非体験して欲しい。
夜になると日本からやってきた他のメンバー、MUKA-CHIN(Dr.)、ORI(Gu.)、BENKEI(Gu.)とも会場で合流し一安心。
フェスは、朝から夜中まで行なわれているようだが、昼間から飲み続けている上に翌日に出演を控えているのと、あまりの寒さに最後まで観ることなくホテルに引き上げた。
たくさんの観客がいるOBSCENE EXTREMEフェスの来場者は、ほとんどが会場内にあるテントサイトでキャンプをしている。
このテントサイトにもステージがあるらしく、朝からブラストビートが鳴り響き、ほぼ寝られないとの噂も聞いた。
幸い筆者のバンドはホテルで宿泊することができ、翌日朝食をとってからメンバーのうち3人は市内散策に出かけた。戻ってきてからMUKA-CHINの婦人とドイツに住む友人も合流し、小パーティー。
迎えに来てもらう連絡を入れ午後3時頃に会場へ到着すると、この日は雨も上がり観客も昨日より多く、昨日よりも更にクレイジーなライブになりそうだ。
この日はメインアクトにイギリスのEXTREME NOISE TERRORが出演し、VARUKERSのRAT率いるWARWOUNDと我々DEATH SIDEなどのハードコアパンクバンドが出演するためか、昨日よりもパンクスの数が多いように感じた。
そうこうするうちに、VARUKERSのヴォーカルRAT率いるWARWOUNDが始まる。初めて観るバンドだが、さすがハードコアのヴォーカリストとしては超一流であるRATのヴォーカルは素晴らしく、曲もVARUKERSの曲をアレンジしてやっていたりなど懐の深さが感じられ、嫌が応にも盛り上がってくる。
そしてDEATH SIDEの出番がやってきた。このメンバーで一度ライブを経験しているからか、良い緊張感で本番を迎えられた。
あとはヨーロッパの地にCHELSEAの魂を、日本のハードコアパンクを刻み込むだけだ。
司会による紹介が終わり、ライブがスタートした瞬間から全てを注いだ。何と言おうが、CHELSEAがつくった曲が今ここで放出されている。絶対にCHELSEAもここにいるはずだ。
見てくれよ、ORIをBENKEIを。お前悔しいんじゃないのか? 素晴らしいだろ?
見てくれよ観客たちを、わかるだろ?
お前が素晴らしいってことが伝わってるぜ!
CHELSEAの魂が存在しなければ、このバンドがライブをやることはない。
それはどんな国、どんな場所でも同じだ。お前が凄いってことを伝えるよ。俺の英語じゃ伝わらないけど、お前の曲なら絶対に伝わる。くやしいけど、いいものはいいんだな。死んでから気付いたよ、CELSEA。気付かせないでくれりゃよかったのによ。本当に命がけでやってたんだな、音楽を。凄いよ、お前は。
時間が無くなったために1曲削ったが、観客も盛り上がり、自分たちとしても手応えを感じられるライブだった。
ライブ終了後にビール販売店に行くと、何人かの店員から写真を一緒に撮ってくれと言われた上にビールを驕ってもらったり、たくさんの観客からも色々声をかけられ、良いライブができたのだと実感できた。
それもみな、CHELSEAのおかげだろう。
こんな大きなフェスに呼んでくれた主催のCURBYと、全てにおいて完璧なサポートをしてくれたCRIPPLE BASTARDSのGIULIOには心から感謝する。
初めてのヨーロッパのライブは心に残る体験ができた。こんなに素晴らしい機会をくれてありがとう。
次の海外は、9月のイギリス・ロンドン。俺たちはCHELSEAの魂を伝える。ただ、それだけだ。
そして今年も、CHELSEAの命日にライブを行なう。そこにはもちろんDEATH SIDEも出演する。さらに8月28日には今のDEATH SIDEの体制で初めて大阪でライブを行なう。
今のDEATH SIDEでもCHELSEAの魂を感じてくれたなら、こんなに嬉しいことはない。(ISHIYA)