スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。今回はスペイン人繋がりとしてF1ドライバーのフェルナンド・アロンソとカルロス・サインツJr.について語ってもらった。現地のメディアではルノーがサインツJr.の獲得を検討しているというが、果たして……?
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8月がやって来た。F1チームにとってはようやくリラックスできる夏休みの季節だ。だが、我々ファンにとってはシーズン中最も退屈な時期といえるだろう。F1はドイツGP後に3週間の夏休み期間に入るのだが、幸いにして次のグランプリは伝説的なトラック、スパ・フランコルシャンで行われる、ファン待望のベルギーGPだ。いまは戦士たちにとって束の間の休息の時。それは、F1パドックで最も情熱的なレーサーであるフェルナンド・アロンソと、カルロス・サインツJr.の2人にとっても大切な休養期間だ。
とびきりに速く、冷静な2度のワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソは、マクラーレン・ホンダのエースとして2017年に3度目のタイトルを狙っている。彼の経験は唯一無二のものだが、同時に、F1キャリアの終わりも近づきつつある。いっぽうでアロンソと対照的なのは、サインツJr.だ。彼は若いが、成熟しており、第4戦ロシアGPまでトロロッソに在籍していたマックス・フェルスタッペンと同等の速さを示していた。彼の将来は明るくF1の未来を担っていくだろう。
ハンガリーGPとドイツGPのコースは、全く異なった特徴を持っている。ハンガロリンクは狭く、コーナーの連続するトラックであるため、パワーユニットの性能はもちろん、空力性能とメカニカルグリップがなによりも重視される。アロンソとサインツJr.の2人のスペイン人ドライバーの所属するチームは強力なパワーユニットを有してはいない。トロロッソはルノーと袂を分かち、現在はフェラーリの昨年型パワーユニットを搭載しているため、アップデートは行われていないし、マクラーレンとホンダは懸命に開発を進めているが、速さが不足しているのが現状だ。
アロンソはマクラーレンに再加入して以降、自身でも満足のできる最高のレースをハンガリーで披露し、ジェンソン・バトンも、ハイスピードサーキットであるホッケンハイムで入賞してみせた。対するトロロッソはハンガリーで良いレースを見せたが、ドイツでは調子が上がらなかった。両チームの差は僅かに3ポイント。シーズン終盤にはマクラーレンがトロロッソをポイントで上回るチャンスが来るだろう。
トロロッソとマクラーレンは非常に堅実な設計のシャシーを用意した。実際にサインツJr.は競争力のあるSTR11を駆り、12レース中、8レースでポイントを獲得している。マクラーレンは厳しいシーズンを送っているが、ホンダのパワーユニットはレースを重ねるごとに改善しており、ペースアップしている。5位のフォース・インディアの背中は遠いが、トロロッソとマクラーレン、両チームの差は僅かだ。
では、スペイン人ドライバーふたりの次の展望はなにか?
まず、2017年の大幅な規約変更に伴い、パワーユニットのトークン・システムが無くなる。これはマクラーレン・ホンダにとっては大きなチャンスだ。アロンソは2017年、あるいは2018年には勝つチャンスが来るだろう。
一方、サインツJr.は異なる状況だ。彼はレッドブルと契約しているが、現レギュラードライバーのダニエル・リカルドとフェルスタッペンのシートは動きそうにないため、現時点ではトロロッソ残留が最も濃厚だ。だが、スペインのメディアは、ルノーがサインツJr.の獲得を検討していると噂している。ワークスチームへの移籍は興味深いオプションといえる。かつてのアロンソの成功を再現するだろうか?
とはいえ、スペインのメディアはあまりに熱狂的にドライバーをサポートしたがる傾向があるため、信頼性と根拠に欠ける話が多いのも事実だ。しかし、火のないところに煙は立たないというように、そういった情報でも時として真実へのヒントになってる場合があるのだ。2人のスペイン人ドライバーは競争力に欠けるマシンで今シーズン奮闘してきた。来シーズンは最高のマシンを手にできるか?それは現時点では分からない。だが状況が上向いているのは事実だ。スペインの戦士たちは、決して諦めない。