「2時間制なら帰りますけど」毎週水曜は早めに退勤して、仕事仲間と飲みに行くことが多いという、渋谷区在住の宇津木誠さん(仮名・31歳・編集者・早稲田大学卒)は、入店した居酒屋で「2時間制」というお店のルールを告げられると、どれだけ喉が渇いていても、即、店を出るという。
「18時すぎには仕事を終えて、仕事仲間6人で飲みに行くんですけど、席はガラガラなのに『2時間制になります』とか言われるとイラッとしますね。そういう店は、『じゃあいいです』と言って即帰るようにしてます」(宇津木さん)■「店の回転率を上げるために気を使いたくない」
繁華街の居酒屋では、「2時間制」を導入しているケースは少なくないため、特殊なルールとまではいえないだろう。しかし、宇津木さんが「2時間制」と聞いた途端に店を出るほど忌避しているのは一体なぜか。
「こっちは男6人、全員結構飲むし、なんなら金も持ってるし。『2時間制なら帰ります』と言って店を出ようとすると、『いえ、混んできたらの話ですから…』とか言ってきたこともありましたけど、なんで店の回転率を上げるためにこっちが時間を気にしながら飲まなきゃいけないんだと思うと、余計にムカつきます」(宇津木さん)宇津木さんは「2時間で店を出ないといけないこと」よりも、店の都合を押し付けられることに腹を立てている様子だ。
では、逆に店側の事情はどうなのだろうか。
■2時間以上ハイペースで飲み続けるお客はそういない
吉祥寺にある小型店の居酒屋で、店長兼オーナーとして店を切り盛りする渡辺さん(仮名・43歳)は、
「経験上、2時間を超えてくると注文のペースが急激に落ちてきます。お客を入れ替えて、新規客からお通し代を取ったほうが商売になるっていうのが正直なところです。それに、長居して話題も尽きてくると、暇になって店員に絡んだりして迷惑ということもあるんですよね。うちくらいの規模の店だと、ほろ酔いで帰ってもらえるのが一番なんです」(渡辺さん)回転率や売上の問題以外にも、長居する客ほど対応に手間を取られるという事情もあるようだ。
■時間制は繁華街ならではといえる
川原幹之さん(仮名・24歳・群馬県出身・江東区在住)は、
「2時間制は上京してから初めて聞きましたね。地元では時間を気にして飲まなきゃいけないのって自動延長制のキャバクラくらいだったので。さすがにもう慣れましたけど、最初の頃は落ち着いて飲めなかったですよ」法律的には、飲食も立派な「契約行為」。注文前にお店の方針が2時間制であることを伝えるのは「契約条件の提示」であり、まったく問題ない。しかしこの問題は法律云々の話ではないのも確かだ。
酒を飲むときくらいは細かいことを気にせずに楽しみたいもの。居酒屋を予約する際には、時間入れ替え制があるか聞いておくのも、幹事の重要な役目なのかもしれない。