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【フェラーリ凋落を問う(2)】SF16-Hの大きな欠点と、メルセデスと違う燃焼技術

2016年08月13日 14:11  AUTOSPORT web

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大きな期待と新しいデザイン哲学をもって、2016年シーズンをスタートさせたフェラーリ。しかし、今はレッドブルにも破れ、昨年を下回る低迷期に入ってしまった。今年のフェラーリの何がいけなかったのか。この状況を好転させられることはできるのだろうか。

開幕戦でセバスチャン・ベッテルが好パフォーマンスを見せて3位表彰台を獲得し、2016年の明るい未来が見えたかに思えた今季のフェラーリ。だが、その後シーズン序盤のフェラーリに突き付けられた現実は、チャンスの取りこぼしと信頼性の欠如、それに開発不足という残念なものだった。ターボの問題解決に目を向けるべきだったのにもかかわらず、シーズン前半の途中からはギヤボックスにトラブルが生じ始め、結果としてグリッドペナルティを受けう羽目になってしまったのだ。

 無論、フェラーリだけが信頼性の問題を抱えていたわけではない。メルセデスも同じく問題を抱えていたが、フェラーリはそのメルセデス不在のチャンスを一度も活かすことができなかった。事実、ニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンが1周目にリタイヤしたスペインGPではレッドブルに勝利を献上してしまった。 

 メルセデスがなぜこんなにも速いのかをピンポイントで指摘するのが困難であるように、フェラーリが凋落した要因をピンポイントで指摘するのも難しい。マシンのそれぞれのエリアのパフォーマンスに焦点を当てれば、フェラーリはメルセデスに迫りつつあるが、全体的に見るとあまりにも多くの点で劣っている部分が見える。

 シャシーに目を向けると、メルセデスに比べてダウンフォースが不足している。このマシンは全てのエアロパーツに個性がないため、メルセデスとレッドブルがこのエリアではより引き立って見える。間違いなく今年のフェラーリには、去年のマシンにはあった独創的なパーツが欠如しているのだ。

 現在のシャシーの開発は、フェラーリほどのリソースを持ったチームにしては惨憺たるもので、主要なアップデートパーツの投入ペースは確実に落ちてきている。さらにフェラーリが空力面で改善すべき箇所は、まったく同じではないものの、開幕戦のときとほぼ変わっていない。

 低ダウンフォースで走ればタイヤがスライドし、その揚句オーバーヒートするが、前後のウイングでダウンフォースを過剰につけ走れば、ドラッグがパワーを殺して最高速を削ってしまう。このように、ダウンフォースの欠如は空力の効率性がもてあそばれることを意味しているのである。

 空力テストのリソースが制限されていても、なぜフェラーリがこれだけのスタッフと資金がありながら、開発リソースでこの程度の結果しか出せないのか説明するのは難しい。

 タイヤに関連した問題かもしれないが、このマシンはトラクションにも苦しんでいる。しかし、元をたどれば諸問題はダウンフォースやサスペンション、パワーユニット、レースエンジニアリング、もしくはその全ての組み合わせに起因する。

 2014年型から大きく改善したフェラーリ製パワーユニットは、メルセデスのそれに匹敵するレベルのパワーとエネルギー回生性能を兼ね備えている。サプライヤーであるマーレ社のリーンバーン技術により、フェラーリの燃費は出力の割にかなり改善されているように見受けられる。しかし、メルセデスはマーレとフェラーリのジェットイグニッション技術とは異なった燃焼技術を駆使して、あれだけの高パフォーマンスを見せている。

 もしかしたら、このジェットイグニッション技術によって、メルセデスは予選でのパワーアップが可能で、Q3で数10分の1秒を稼ぎ出しているのかもしれない。フェラーリの燃焼技術では、空燃比の高い予選時にはフルブーストできていないように見える。タイヤの暖まりの問題とギヤボックスペナルティも相まって、予選でのグリッド順位は妥協を余儀なくされている。

 グリッドの後方に沈んでいることは、一貫性のある速いスタートダッシュ、卓越したタイヤマネジメント能力といったフェラーリの長所を相殺している。今やレッドブルはフェラーリとメルセデスの間に割って入るようになり、レースでフェラーリは苦難を強いられている。

 3つのトークンのほとんどがターボとMGU-H、それにカムプロフィールに使われたため、フェラーリの2016年のエンジン開発はほぼ終わりを迎えている。残る3つのトークンは燃焼系のアップグレードに用いられるであろうが、これは予選のブースト向上に寄与するほどのものではないであろう。
(第3回へ続く)