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MotoGP第10戦オーストリアGPプレビュー:19年ぶりの開催地で後半戦がスタート

2016年08月12日 16:41  AUTOSPORT web

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19年ぶりの開催地となるレッドブル・リンク
今週末、オーストリアのレッドブル・リンクでMotoGP第10戦オーストリアGPが開催される。

 オーストリアでの2輪の世界GPは1997年以来の開催となる。このコースは、1969年にオーストリアの第2の都市グラーツから北西に約100キロメートルに位置するシュピールベルクの緑美しい丘に建設されたエステルライヒリンクを起源とする。オーストリアGPは1971年に初開催されたが、その舞台となったのはザルツブルク郊外にあるザルツブルクリンクだった。

 それから1994年までザルツブルクリンクで通算22回のオーストリアGPが開催されたが、エステルライヒリンクがコースの大幅な改修(距離の短縮、レイアウト変更)を受けてA1リンクに生まれ変わった後、1996年と1997年の2度、A1リンクが世界GPの舞台となった。しかし、その後、オーストリアでの世界グランプリ開催は途絶えてしまう。

 1990年代後半から、オーストリアを拠点とするエナジードリンクメーカーのレッドブルは急速にモータースポーツへのスポンサー活動を強化、2003年にはオーストリアのバイクメーカー、KTMがロードレースに進出し、125ccクラスで世界GPに参戦するなど、オーストリア企業のレース熱は高まっていたが、オーストリアGPの復活には時間がかかった。

 レッドブルは2004年にA1リンクを買収し、再開発を手掛けようとしたものの、騒音問題などより、地元の環境保護団体からの反発を受けて計画が頓挫。この後、しばらくA1リンクは放置され、廃墟と化してしまう。しかし、レッドブルは2010年にA1リンクを再建することを決定すると同時に名称をレッドブル・リンクに改めることを発表、2011年にはリニューアルオープンにこぎつけた。そして、F1を始めとする4輪レース、2輪ではドイツ選手権のオーストリアラウンドとしての開催などで実績を積み、2014年には2016年からのMotoGPの開催をドルナスポーツとの間で合意、今回の開催に至った。

 レッドブル・リンクは時計回りの全長4.318km、右コーナー7、左コーナー3という構成の中高速サーキット。丘陵地帯に作られたコースのため、1コーナーは上り坂の右コーナーで、その後、高速で駆け抜けるゆるやかな上りが続き、上り切った3コーナーがコースの最高地点となる。右コーナーの3コーナーはエステルライヒリンク時代のバックストレートの中間地点に当たり、タイトな右3コーナーを曲がると、下りセクションとなり、右左と中速コーナーが連続し、途中短いストレートを挟んで、最終コーナーへとつながる。

 レースウイーク直前に、最終コーナー(10コーナー)のコース幅を13メートルから10メートルに変更された。これはコーナーリングスピードを落とし、安全性を向上させることが目的だ。

 ドイツGP後に行われた合同プライベートテストでは、アンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)が記録した1分23秒240がベストタイムとなっている。

 今レースから後半戦のスタートなるMotoGPクラスだが、前半戦最後のドイツGPで今季3勝目を記録したマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)が2位に48ポイント差をつけてランキングトップをキープしている。マルケスは昨年のイギリスGP終了後にレッドブルリンクを訪れ、RC213Vで数ラップを経験。今年のカタルニアGP後には、スポンサーでもあるレッドブルのプロモーションビデオ撮影のため、市販車のRC213V-Sで周回を重ね、コースレイアウトの確認を行なったが、ドイツGP後のプライベートテストには参戦していない。

「これまで2度、このコースを走る機会があったけど、まだ全開で走ったことがない。幾つかのセクション、ハードブレーキングからの旋回は、オースティンを思い出すけど、最終セクションは非常に速い。自分のバイクで早く走りたい」とマルケス。

 ランキング2位のホルヘ・ロレンソ(モビスター・ヤマハ)は、第7戦カタルニアGP以降、接触転倒、10位、15位と本来の走りをすることができずにいる。ドイツGP終了後レッドブル・リンクプライベートテストに参加したロレンソは、マシンセッティングを進めながら、トップからコンマ954秒差の2日間総合6番手のタイムを記録した。

「ライバルたちはブレーキングでの安定感、加速、トップスピードで大きなアドバンテージがある」とロレンソはテスト後に語っている。

 バレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ)は前半戦で3度のノーポイントが響き、トップのマルケスから59ポイント差のランキング3位。ロッシは唯一、A1リンク時代にこのコースでレース経験があるライダー。1996年には125ccクラスで優勝を収めている。プライベートテストでは1分24秒169で2日間総合6番手。「トップスピードに苦戦している。ライバルたちは非常に速い」とロッシ。

 ランキング4位にダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ)。ペドロサもマルケスと共に、プロモーションビデオの撮影のためにコースの走行経験がある。

「RC213V-Sで数ラップ走った。サーキットは森に囲まれた美しい場所にあり、ショートトラックだけど、興味深い速さで、ワイドなセクション、タイトなセクションがある。最も困難なのは、走行ラインが1つしかないところ。オーバーテイクが難しいコースだと思う」とペドロサ。

 マーベリック・ビニャーレス(スズキ)はランキング5位。プライベートテストでも7番手につけていた。

「レッドブル・リンクの高速コーナーは僕たちに適していると思う。このカードで勝負するために、ベストなセットアップに仕上げる必要がある」とビニャーレスは上位をねらう構えだ。

 サテライト勢トップのポル・エスパルガロ(ヤマハ・テック3)がランキング6位。ポル・エスパルガロは鈴鹿8耐に参戦したため、レッドブル・リンクのプライベートテストには参加していないが、8耐では見事に2連覇に貢献し、好調さを維持したまま新コースに臨む。

エクトル・バルベラ(アビンティアレーシング)がランキング7位に続き、バルベラはプライベートテストで5番手を獲得するなど好調だ。

 ランキング8位のイアンノーネはプライベートテストで2日間連続でトップタイムを記録、チームメイトでランキング9位のアンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)が2番手で続き、テストライダーとして参加したケーシー・ストーナー(ドゥカティ)も3番手につけるなど、ドゥカティ勢が好調の内にテストを終了している。

「レッドブル・リンクは、みんなにとって新しいコースだけど、7月のテストではグリップがあり、僕たちは常に速かった。僕たちのマシンに合っている。初めからバイクにはいいフィーリングがあった。これはレースに向けて非常にポジティブなことだ」とイアンノーネ。

「コースは、低いギアからの加速、ミディアムとロングのストレートといったところがボクたちのマシンにとても合っている。テストでは戦闘力が高かったけど、タイヤの消耗がとても激しかったので、ミシュランが準備するタイヤを確認する必要があるね」とドビジオーゾ。

 また、オランダGPでMotoGPクラス初優勝を記録したジャック・ミラー(マークVDS)もテストで総合4番手につけるなど好調。ミラーは2011年にドイツ選手権の125ccクラスでレッドブル・リンクでのレースを経験している。

 Moto2クラスではヨハン・ザルコ(カレックス)が通算4勝を記録してチャンピオンシップをリード。25ポイント差のランキング2位にアレックス・リンス(カレックス)、ランキング3位にサム・ロウズ(カレックス)、ランキング4位にトーマス・ルティ(カレックス)が続く。

 ザルコ、リンス、ルティは7月下旬に行なわれたレッドブル・リンクでのMoto2クラスのプライベートテストに参加。ロウズとルティはMotoGPクラスのプライベートテストでもテストを行なった。

 ランキング5位の中上 貴晶(カレックス)はドイツGPを終えて日本に帰国、プライベートテストには参加せず、レースウイーク初日が初走行となり、どのようにコース攻略するかに注目が集まる。

 Moto3クラスではブラッド・ビンダー(KTM)がランキングトップ。47ポイント差のランキング2位にホルヘ・ナバーロ(ホンダ)、ロマーノ・フェナティ(KTM)がランキング3位に続く。

 ビンダーを始めとしたKTM勢はKTMのホームコースでプライベートテストを実施。ただし、フェナティらイタリア人ライダーは、サマーブレイクの期間中、VR46モーターランチ、ミサノサーキットでトレーニングを行なった。ナバーロはカタルニアGP直後のトレーニング中に骨折した左脚の脛骨と腓骨の治療とリハビリを優先した。

 日本勢では尾野 弘樹(ホンダ)がランキング20位、鈴木 竜生(マヒンドラ)がランキング24位から後半戦をスタート。尾野はサマーブレイク中、他のホンダライダーと共に、チェコGPの開催地、ブルノサーキットでテストを行なった。