スーパーフォーミュラ第4戦ツインリンクもてぎで実施される『ドライ路面用タイヤ 2スペック制』。これはシリーズ運営団体である日本レースプロモーション(JRP)の白井裕・技術顧問が社長在任時代から実現を望んでいたプランで、今季からワンメイクタイヤ供給を行なっているヨコハマの理解と協力を得て、今回の試験的な実施に至ったものである。接戦激戦のスーパーフォーミュラ、そこにさらなる戦いのアクセントが加わることが期待されている。
通常の1スペック供給下で使用されている『ミディアム』、そしてもてぎ戦で新たに供給される赤い目印のついた『ソフト』、これで2スペックが揃うわけだが、ソフトも使用しての全チーム参加テストが前戦の決勝翌日に富士スピードウェイで実施された。
富士ともてぎではコース特性が異なる上、1周の距離も250メートルほど違う。よって、富士でのワンデーテストのみで「ソフトはミディアムよりどれくらい速いのか」を占うことは難しいが、テスト当日にドライバーやエンジニア、チーム首脳らから聞こえてきた声を総合すると、ラップタイム差は「1秒前後」になりそうだ。
富士ではコンマ5秒程度だった、という声もあったことから推察しても、1秒を大きく超えて2秒に近づくようなタイム差が生じる可能性はもてぎ本番においても高くないだろう。
ヨコハマのタイヤ開発陣を率いる秋山一郎エンジニアに聞いたところでも、それぞれのタイヤに特化した車両セッティングの詰めをすれば話は違ってくるかもしれないが、基本的にはタイヤを履きかえただけで前後バランスもいじらずに、という運用でのタイム差としては、やはりテスト後のドライバーとの討議から得た印象を含めて概ね1秒になるだろう、との旨であった。
ラップ1秒差を大きいとみるか、小さいとみるかは考え方と判断基準によって違ってくるが、僅差の攻防が常態化しているスーパーフォーミュラの予選においては“大差”ともいえよう。つまり、もてぎの予選においてはソフトが決定的な武器になり得る、ということだ。
現在のスーパーフォーミュラでは、ドライタイヤはレースウイークを通じて各車原則6セット使用可、うち新品が4セット、前戦からの持ち越しが2セットとなっており、今回のもてぎでは新品4セットがミディアム、ソフト各2セットとなる。Q1~Q2~Q3と続く戦いのなかでソフト新品をどう使うかが、予選での戦略攻防となってくるだろう。
そして決勝では「1度以上はタイヤ交換を行い、両スペックを必ず使用」ということがルールとしてに義務付けられる。ソフトのライフ面も気になるところになるが、富士テストでは多くの陣営が「ソフトという言葉の印象ほど極端に早い性能低下はなさそう」との感触を得たようだった。
もちろんコンディションに依る部分が大きく、真夏ということも含めて本番になってみないと分からないところではあるものの、ソフトで走る距離の方を長く取るレース戦略が充分あり得そうな雰囲気だ。
F1もそうだが、速い方のタイヤでなるべく長い距離を、というのはレースの常道でもある。いずれにせよ決勝でソフトをどう使うか、これは予選以上に奥の深い戦略攻防を呼ぶ可能性が高い。
ドライタイヤ2スペック供給、この新たな試みがスーパーフォーミュラもてぎのレースウイークにおいて戦局を大きく動かす新要素となることは間違いなさそうだ。