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生田斗真、なぜ“変わり者”ばかり演じる? 『秘密』の無表情キャラから探る

2016年08月10日 16:31  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)「秘密 THE TOP SECRET」製作委員会

 テレビドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス』(フジテレビ系)で第54回ザテレビジョンドラマアカデミー賞・助演男優賞と第11回日刊スポーツ・ドラマグランプリ・助演男優賞を、映画『人間失格』『ハナミズキ』で第53回キネマ旬報ベストテン新人賞と第53回ブルーリボン賞新人賞を受賞するという華々しい受賞歴を持ち、ジャニーズ事務所の中でも圧倒的なテレビドラマ・映画出演数を誇る生田斗真。これまでエッジの効いたキャラクターから王道の恋愛ストーリーのヒーロー役まで何でもこなしていた生田だが、また一つ演技の可能性を広げた。8月6日に公開された『秘密 THE TOP SECRET』の主役・薪剛役が好評なのだ。


 『秘密 THE TOP SECRET』は、清水玲子原作の漫画『秘密 -トップ・シークレット-』を実写映画化した作品だ。舞台は西暦2060年の日本における「科学警察研究所 法医第九研究室」、通称「第九」。第九で行われる「MRI捜査」では、死者の脳から記憶を映像として再現する事ができる。映画『秘密 THE TOP SECRET』では、生田が演じる第九室長の薪剛、岡田将生が演じる新人捜査官の青木一行を中心に、「死刑囚・露口の行方不明になった長女・絹子の捜索」、「死んだはずの絹子がなぜ生きているのか」、「28人連続殺人事件・貝沼事件と絹子の連鎖」、「なぜ第九は貝沼事件を封印したのか」という4つのミステリーを紐解いていく。


 その『秘密 THE TOP SECRET』で、生田は薪剛というキャラクターを見事に演じていた。薪は、頭脳明晰、冷静沈着なうえ、驚異的な記憶力、昆虫並みの動体視力、鋭い洞察眼を持ち、凶悪犯の脳を見ながら淡々と仕事をこなし続けることで周囲から特別視されている存在だ。一方で、秘密を抱えすぎているために感情を表に出せない面も持っている、ある意味では人間らしいキャラクターだ。その冷淡でありつつも実は繊細な部分を、生田はうまく表現していた。


 例えば作品の前半は、薪自身の秘密や心の闇を抱え、不安定で脆い部分を必死で隠すために人の前では平静を装っている様を、「無表情」で演じきった。本人も、「薪は感情を表に出さない男なので、『何もしない』演技が多く、自分でもなかなか良し悪しのジャッジが難しかった。」(出典:生田斗真、大友啓史監督との念願の初タッグで作り上げた“心地よい頭の疲れと頭の痛み”)とインタビューで話していた通り、明らかな感情の起伏がない役柄の方が、実は高度な演技力を要求されるものだ。


 しかし後半になると、表情が一変する。薪が抱える秘密の鍵をにぎる、かつての親友かつ同僚であった鈴木の脳内映像を見て真相を知った後は、どこかホッとした表情に切り替えていた。薪は、感情をほとんど外に出さないタイプだが、人間故にどうしても感情が漏れてしまう。その微妙な変化を、生田はわずかな表情の違いで演じていた。


 一方で、プライベートでの生田は感情豊かでもあり、薪剛という役とは正反対だ。友人による誕生日のサプライズで嬉し涙を流したり、若手俳優と飲み会をして自らの演技論を熱く語ったというエピソードもある。つまり、自分と正反対の役を違和感なく演じるために、しっかりと役作りをしていることがうかがえるのだ。監督の大友啓史氏も「生田君は小手先のテクニックで演じるタイプではない、我を捨てて役にどのように憑依していくのか、そのプロセスをとても大切にする素晴らしい役者でしたね。」(出典:GYAO! 『秘密 THE TOP SECRET』特設サイト)と、その姿勢を評している。


 今後、『土竜の唄2(仮)』や『彼らが本気で編むときは、』など、主演映画が立て続けに公開される予定の生田。実力派俳優として名を広め、ジャニーズ事務所の中では珍しく俳優業一本で活動をしている彼は、この先もさらに演技の幅を広げていくのだろう。どんな思いで演技に取り組んでいるのか、その脳内も一度、覗いてみたい気もする。(高橋梓)