近年、邦画が順調だ。興行収入は2年連続で1200億円に到達。 2000年代前半は興行収入に占めるシェアは洋画の方が多かったものの、2007年以降はずっと邦画が上回っている。だが、製作現場は低予算に追いやられている実態があるようだ。
「紀子の食卓」(2006)や、「ヒミズ」(2012)の監督として知られる園子温氏(@sonosion888)が8月7日、ツイッターで日本映画の予算の少なさについて言及した。中国映画をプロデュースしたという園氏は、現場や製作費の違いに「日本映画が本当にダメに見えてきた」という。
「現場ではブラックプロデューサーが息巻く」「低予算映画なんてこの世からなくなれだ」
たとえば、中国の現場は「スタッフの平均年齢が28歳で、製作費が数十億円で、休みなく和気あいあいと自主映画みたいに作ってる」という。一方の日本は「平均年齢40代で製作費数千万円」と現状を語る。
「数億円で今年の大作だなどとのぬかして作っている日本映画はなんですか?」
と疑問を投げかけている。予算がないため工夫をするしかないものの、ギャラが少ないために助監督のなり手も減っているそうだ。「人材がまったく育ってないし、それも工夫して何とかしなくちゃ。人の取り合いで、誰もいないけどそこも工夫。全部工夫」と綴る。
また、8月9日には、「低予算でもいい映画はある」という映画ファンに向けて現場の過酷さを投稿した。
「その現場ではブラックプロデューサーが今夜も朝まで撮るぞと息巻き、助監督は安い賃金に耐えられず逃げ数年前まで年末に口座に10万円なく年越しそば食えなかった園子温から言わしてもらうえばさ、低予算映画なんてこの世からなくなれだ」
「低予算映画によって苦しむのはスタッフ。キャスト」であり、メインキャストであっても1か月拘束されてギャラが1万円ということもザラなのだという。
中国の新人監督の製作費が10億円のところ、園監督は3000万円
園氏は6月にも、「中国もアメリカも学生の自主映画の平均制作費は1億以上。ところが日本は商業映画の平均制作費すらその半額以下」と邦画の低予算ぶりを嘆いている。
中国では新人監督の第一作目の製作費が10億円のところ、日本では25年以上監督をしている園氏の製作費が3000万円や5000万円なのだそうだ。ちなみに、日本で製作費が10億円というと、「巨大大作」レベルになるという。
今回の園氏のツイッターの一連のツイートは数千件リツイートされ、多くの人に低予算映画の問題提起として目に止まったようだ。「園子温が言うと説得力があるな」と納得する人が多い。
「園子温が低予算映画は悪だと言ってるのって、日本のクリエイティブビジネス全般に言えるね 安くて良いものなんて本当は存在しない。良くて安いがあるならそれは利益を削った結果だよ。当然好きでやってるわけではなく、やらされてるかせざるをえないだけ」
また、映画ファンという立場から何か出来ないのかと考える人も。「気になる作品は映画館へ観に行ったり、DVD買ったり、クラウドファンディングやってたら支援したりとかしてるけど、それは極めて微細なものだろうしなぁ…」と頭を悩ませていた。
実際、経営難に陥っている製作会社も多い。昨年9月には大ヒットホラー映画の「呪怨」や「リング」を手がけたオズが東京地裁から破産手続き開始決定を受けている。邦画がクールジャパンの一端を担うためにも、相応の予算が必要だろう。
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