先月末に封切られ、ネット上でも話題になっている「シン・ゴジラ」を観た。一人の怪獣オタクとして、非常に満足できる作品だったため、観賞後はお腹いっぱいになってしまい、半日ぐらい何も食べなくて平気だった。
ただ、ひとつだけ、今回残念だったことがある。それは劇場に足を運ぶ前に、不意打ちのような形で、SNSで誰かが書いたネタバレを読まされてしまったことだ。物語の核心に触れるような重大な秘密を、映画館に出向く前に知ってしまった悲しみは、いかんともしがたい。(文:松本ミゾレ)
電車で見かけたリオ五輪の結果をネタバレする最悪な上司
映画だけの話ではない。折りしも今月8日に、電車で移動中にこんなシチュエーションを見聞きした。上司らしき男性が、部下と思しき若者に「やっぱりオリンピックはいいな。おかげで寝不足だよ」とかなんとか語りかけている。
すると部下が「楽しみです、録画しているので!」と返事をした。次の瞬間の、上司はニヤニヤと笑いながら、「知ってるか? お前の応援していた選手、敗者復活戦で銅メダルをゲットしてたぞ」と言ってしまったのだ。
彼は部下の話を聞いていなかったのか。それともいやがらせ目的でネタバラシをしてしまったのか。この話を聞いた部下は、「そうですか……」と、すっかり消沈していたのが不憫でならない。
ネタバレを目の当たりにする状況をよくよく振り返ってみると、善意や、あるいは興奮で語り手が喋りすぎてネタバレに至ってしまうということもたしかにある。
しかし、それよりも悪意を持って「相手をガッカリさせてやろう」とネタバレを仕掛ける人の方が多くないだろうか? 古書店で推理小説を買ってみれば、1ページ目に犯人の名前が書かれていた、という話を耳にしたことがある。
ネタバレで人を悲しませるのはとんだワガママ野郎だ!
また、映画のネガキャンのつもりか、結末まで一気に文字に起こして、挙句に「つまらない。時間の無駄」と書き添える恐ろしいネットユーザーをつい最近も見た。ネタバレ禁止の掲示板で、ドラマの結末を予想している人々に対して、「原作の結末はこうだから、ドラマもこうなるに決まってるだろ」と得意気に返信をする者もある。
単純に「俺の発言でみんなを悲しませてやれ」という思いでネタバレをしているように感じられる。とんだワガママ野郎である。
映画のネタバレについては、何もここ最近になって気になっているというわけでもない。インターネットが普及した辺りから、どこからか流出した情報が、様々なメディアで拡散されることも少なくない。
だからこそ、僕はSNSなどを使う際に、自分が近々観賞予定の映画やドラマなどについてのキーワードが断片的にでも目に付いたら、自ずとスルーして読まないようにしている。同じ事をしている人は他にもいるはずだ。
楽しみでならない未見の作品についての情報なんて、本当に最小限しか知りたくない。ネタバレは、それをする本人の自尊心を満たすことはできるかもしれないけど、その満足を得る代償として、多くの無関係な人々が舌打ちをしていることを忘れてはならない。
僕も決して性格が良いタイプではないという自覚があるため、こういう、誰かをガッカリさせることをやらかさないように注意しておきたい。