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「労働条件について尋ねるのは、印象を悪くするので避けるように」――大学の就職指導では「ブラック企業は見抜けない」と男子学生が指摘

2016年08月08日 18:40  キャリコネニュース

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2017年卒業予定の学生の就職活動が解禁されて2か月あまり。昨年に続いて売り手市場と言われているが、就活のプロセスに疑問を持つ学生もいるようだ。8月4日の朝日新聞オピニオン欄には、21歳の男子大学生が「ブラック企業を見抜ける指導を」という投稿を寄せている。

男子学生は、就職活動で「労働条件をきちんと説明しない企業」が多かったことを疑問に感じた。例えば、会社の資料に初任給の記載があっても、それが「基本給だけなのか諸手当も含むのか分からなかった」と振り返る。

「『内定を取りやすくするため』だけではない就職指導」が必要

また、それを採用担当者に質問しようにも大学の就職指導で「労働条件について尋ねるのは、印象を悪くするので避けるように」と釘を刺されていたそうだ。これについて男子学生は、

「大学で指導されるのは『内定を出してもらうための対策』だ。危ない会社を見抜くポイントなど教えてくれないから、ブラック企業を見抜けない。現状では、意欲に満ちた学生がブラック企業を選んでしまうことを大学は防げないと思う」

と考えを表明。「『内定を取りやすくするため』だけではない就職指導が、大学には求められるのではないか」と提言している。この投書はツイッターで拡散され、

「労働条件は、企業側が言わないのであれば、質問してでも聞き出すべき」
「都合はよいことばかり言って後は何も知らない顔して採用する会社は、ダメです」

といった反応が寄せられていた。

志願者確保のために就職率アップに励む大学

男子大生が指摘するとおりだとすれば、その理由は何なのだろうか。背景には高校生が大学を選ぶ際、「就職に有利であること」を意識していることがあげられそうだ。

リクルート進学総研が2013年に実施した「高校生の進路選択に関する調査」によれば、志望校検討時に最も重視することは「学びたい学部・学科・コースがあること」なものの、男子では2位に「就職に有利であること」がランクインしている。

また、毎日新聞の5月の記事では、都内の大学の進路指導担当者が「今年の卒業生の就職率」を気にしていると明かしている。実際に就職率を見て「志望大学を決める高校生や保護者も多い」という。就職率のデータは7月に出るそうだが、「大学関係者にとっては『通知表』が手渡されるのを待っているような心境」だという。

そのため、学生の数を増やしたいと考える大学側が、就職率アップを目標に「内定を出してもらうための対策」を伝えていると考えられそうだ。

若者が会社を辞めた理由「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」

だが、内定を貰うことがゴールではない。厚生労働省の資料によれば、3割以上の学生が就職しても3年以内に辞めてしまっている。また、厚労省の「2013年若者雇用実態調査」の結果を見てみると、「初めて勤務した会社をやめた主な理由」は、「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」が1位で22.2%となっている。大学側も学生の先を見据えるのであれば労働条件の質問もするように促すべきだろう。

2016年3月1日からは「若者雇用促進法」が本格施行されている。新卒の求職者が企業に対し、過去3年間の「離職人数」や前年度の「時間外労働」「有給休暇取得日数」の実績などを問い合わせた場合、企業は開示しなければならない。企業側が嘘の情報を提供したとしても現在は罰則がないため、効果を疑問視する声もあるが、内情を知る手段の一つであると言えるだろう。

大学側が学生に「若者雇用促進法」の周知を図り、多くの学生が企業に問い合わせるようになれば情報共有も進み、ブラック企業かどうかの見分けもつきやすくなるのではないだろうか。

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