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くるり、BUMP、アジカン……それぞれのアニバーサリーイヤーの動き

2016年08月08日 13:41  リアルサウンド

リアルサウンド

『くるりの20回転』

 2016年は、結成からデビューなど、様々なバンドのアニバーサリーイヤーが目立つ年である。“周年”とはバンドにとってどういう位置付けなのだろうか。主に20周年を迎えるアーティストを中心に、今年のバンド活動を軸に考えてみたい。


(参考:くるりの「琥珀色の街、上海蟹の朝」に隠されたメッセージ オフィシャルインタビューから分析


 くるりは、1996年9月に京都府内の大学のサークル内で結成し、今年で結成20年目を迎えた。また、自らが主催するイベント『京都音楽博覧会』も今年9月で10回目の開催に至る。同月には、デビュー曲「東京」から最新作「琥珀色の街、上海蟹の朝」まで、これまでの全シングル曲を収録したオールタイムベスト『くるりの20回転』のリリースも控えている。そして、くるりが昨年から精力的に取り組んでいるのが、コンセプトライブシリーズ『NOW AND THEN』だ。同企画はくるりが、“過去を振り返ったうえで、これからを創っていく”という意思を込めたもので、これまでに1stアルバム『さよならストレンジャー』、2ndアルバム『図鑑』、3rdアルバム『TEAM ROCK』と4thアルバム『THE WORLD IS MINE』、5thアルバム『アンテナ』の再現ライブを各地で開催している。くるりは、過去作再現ツアーで自身の音楽活動を振り返っているが、R&BやHIPHOPのテイストを含む「琥珀色の街、上海蟹の朝」の新鮮さや、交響楽団とのコラボなど新しい活動にも取り組んでおり、自らの音楽活動を総括しながら、新たなフェーズへ向かおうとする姿勢が見られる。


 BUMP OF CHICKENは、初めてライブを行った1996年2月11日を結成記念日とし、ちょうど20年目となる同日に、『BUMP OF CHICKEN 結成20周年記念Special Live「20」』を幕張メッセで盛大に開催。新旧織り交ぜたセットリストを披露し、2002年アルバム『jupiter』から「ベル」をライブ初披露するなど、ファンへのたくさんの愛と感謝が凝縮された1日となった。その後も、初のスタジアムツアー『BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 “BFLY”』では、総動員数が約30万人に及び、日産スタジアム公演は2日間だけで14万人が集結した。その後も同ライブで披露した新曲「アリア」が現在放送中のTBS日曜劇場『仰げば尊し』の主題歌として起用され、今秋スタートのTVアニメ『3月のライオン』のオープニングテーマを書き下ろすことも決定している。彼らはこれからもこの勢いをとどめることなく、多くの人々に新たな音楽を届けていくだろう。


 ASIAN KUNG-FU GENERATIONは、2016年第2弾シングルとして、2004年に発表した自身の2ndアルバム『ソルファ』から「Re:Re:」を再録し、シングルカットしてリリース。同作のアートワークに『ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION 2014』以来、約1年9カ月ぶりに中村佑介氏のイラストを起用し話題となった。加えて、13年ぶりにテレビ東京系アニメ『NARUTO-ナルト-』のテーマ曲を「ブラッドサーキュレーター」で担当し、「遥か彼方」、「それでは、また明日」に続く3度目のコラボが実現。今年秋には「Re:Re:」、「リライト」、「君の街まで」などが収録された『ソルファ』を再レコーディングしたアルバムのリリースも予定している。同作のリリースには、かつてから彼らが願っていたことをこの節目にやっと実現することができたという経緯がある(参考:https://twitter.com/gotch_akg/status/524885810940637184)。彼らの作品に対するこだわりを強く感じる取り組みとなった。


 また、15周年を迎えるORANGE RANGEも、ベスト盤となる再録アルバムを7月にリリースした。しかし、この作品は、これまでに培ってきた数々の縁、これから作り上げていく新たな縁をテーマに、15曲全てを違うゲストと再録を行い、縁ある人々と共に作り上げたコラボベストアルバムに仕上がっている。ゲストには、同郷の先輩バンド・モンゴル800や、メンバーが尊敬する高橋幸宏、これまでライブで共演してきたアーティストなどが名を連ねた。このような取り組みからは、ミクスチャーという自由な音楽性でブレイクした彼らの原点回帰的な発想が伺える。


 このように、それぞれのバンドが周年にあわせたさまざまな活動を行っている。しかしそれらは、単なるお祝いムードを盛り上げるものだけではなく、各バンドの今までとこれからを確認するものでもあるようだ。それぞれかたちで節目を迎え、次なるバンドの節目にむかって様々な活動を行っていく彼らの今後に、ますます注目していきたい。


(文=大和田茉椰)