好きなことだけして生きていられたらいいのに。それがおカネになって生活できたらいいのに――。漠然とそう考える人に読んでもらいたいのが、堀江貴文氏の新刊「99%の会社はいらない」(ベスト新書)だ。
8月5日現在アマゾンのビジネス書ランキング(経済学・キャリア・MBA)で1位をキープ中。世のサラリーマンに「日本の会社っておかしくない? 本当に必要?」と疑問を投げかけ、これからの新しい働き方を考えさせる本である。(文:鈴本なぎこ)
「忙しい」が口癖の人は、他人の時間を生きている
「世の中の大多数の人々が所属している『会社』という仕組みでは、『他人の時間』に縛られることが多い。やりたくもない仕事をさせられ、ただただ給料を貰うため、生活するためだけに仕事をこなす」
本書の最初で、堀江氏はこう指摘する。こう言われてしまってはミもフタもないが、「忙しい」が口癖になっている人は「苦しい他人の時間を生きている」と断言されると耳が痛い。
会社で好きなことを仕事にしているなら問題ないが、「そんな人は100人に1人ぐらいだろう。だから99%の会社はいらない」という考えだ。
堀江氏自身はさまざまな事業を手掛け、やることは山ほどあるのに「それほど忙しいと感じていない」という。同じ時間だけ稼働していても、「忙しくて大変」と「そこまで忙しくない」と感じる人の差は何なのか。答えは簡単だと言う。
「前者は『他人の時間』を生きる"苦しい"忙しさで、後者は『自分の時間』を生きる"楽しい"忙しさだからだ」
ポイントは不要なものを削ぎ落とす「最適化」
誰だって好きなことをしていれば楽しいし、時間はあっという間に過ぎる。堀江氏は自分がやりたいことしかやらないので、「自分の時間を生きている」という自負がある。そして本書を通じて、いまのネット社会ならば「誰にでもできる」と可能な手法をいくつも挙げている。読後は素直に「行動しなくては!」と思わせてくれる説得力があった。
しかし自分の時間を生きることは、そのために「不要なもの」をとことん削ぎ落とすことでもある。堀江氏はこれを「最適化」と呼ぶ。AIを駆使してムダを排除するのはもちろん、家も車も持たずホテル住まいだ。
時計なんてスマホでいいし、パソコンも1台あれば十分。両親は健在だが、家族とは暮らしていない。以前テレビでは言っていたが、離婚した元妻や子どもの存在に触れることすらない。経済的なつながりはあるのだろうが、完全な一匹狼だ。
好きなことで活躍したいと思えば、周囲の批判を恐れず突き進む覚悟や努力が必要だ。家族と暮らす幸せを生きている筆者としては、やはりどこか「マネできないなぁ」という気分は沸いてくるが、堀江氏はこの生き方を他人に強いているわけではない。
エサはもらえるが自由がない「飼い犬」でいいのか
わかりやすい例えとして、自由はあるが毎日エサ獲りしなくてはならない「野生の狼」と、エサはもらえるが自由がない「飼い犬」ではどちらがいいか、とも問う。当然堀江氏は「野生の狼」である。
どちらが正しいわけではないが、行動せずに「これしかない」と決めつけるのはダメだと堀江氏は諭す。独立して稼ごうと決意する人だけでなく、会社だけに頼らず副業しようとか、この会社しかないと転職を諦めている人が「自分の時間を生きよう」と動き出すきっかけになるかもしれない。
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