ふたつの大きな衝撃が走った予選となった。スーパーGT第5戦富士のGT500の予選Q1では、レクサスRC Fの6台のうち5台がノックアウト。残った1台のRC Fはヨコハマタイヤを装着するWedsSport ADVAN RC Fで、レクサスのブリヂストン勢は全滅。そして予選Q2では84kgのウエイトハンデを搭載したMOTUL AUTECH GT-Rが3番グリッドを獲得し、ライバル陣営だけでなくGT-R陣営内にも驚きの声が上がった。
「2スペック目のエンジンが失敗なのか!?」「いや、タイヤの選択ミスじゃないか!?」。予選直後のプレスルームでは、Q1で5台がノックアウトされたRC Fの原因を推測する声で溢れた。
RC Fはこの富士戦から全車、今季2基目のエンジン、通称2スペックエンジンを投入しているが、ドライバーからは「低速から中速にかけての伸びがマイルドになって良くなった」というポジティブな声がある一方、「前より良くなった感触はあるけど、ホンダの2スペック目に比べて伸び幅は小さい」との声もあり、判断が難しい。
また、タイヤに関してもポールを獲得したカルソニック IMPUL GT-RとRC Fのブリヂストンタイヤのコンパウンドは大きな差はないという声があり、タイヤ自体に問題があったわけではなさそうだ。では、なぜRC Fのブリヂストン勢は惨敗とも言える結果に陥ってしまったのか。
タイヤでもなく、エンジンでもない──残る要素は、やはり空力、ダウンフォースとなるのではないか。RC Fはダウンフォースが不足しているため、リヤウイングを立てなければならず、それによってドラッグも増えてしまい、エンジンパワーを速度に活かせない。また、ダウンフォースが不足していてはタイヤに大きな荷重をかけづらく、タイヤのゴムの中心まで熱を入れづらいため本来のグリップを発動できない……以上はあくまで推測ではあるが、RC Fのロードラッグ仕様のエアロはライバル勢、特にGT-Rに比べて、想像以上にパフォーマンス差が大きく、根が深い問題なのかもしれない。
■決勝は優勝争いと同じくらい、3位争いが注目どころに
その考え方を推し進めると、RC Fとは反転して84kgで3番グリッドを獲得したMOTULの好パフォーマンスもある程度、理解できる。もちろん、MOTULのロニー・クインタレッリが「パーフェクトなアタックだった」と話すように、ドライバーがその性能を出し切ったからこそのタイムであることも確かだが、それを支えたのが大きなダウンフォースだったのではないか。
ロードラッグ仕様ながらダウンフォースがライバルに比べて豊富なGT-Rはリヤウイングを寝かせることができ、直線速度も上げられる。タイヤもミシュランとメーカーが異なるが、大きな荷重があればきちんと性能を発揮させやすい。また、ダウンフォースによって強いグリップが得られるため、予選一発のアタックであれば84kgでも1周ならば数字ほどの差にはならないのかもしれない。
明日の決勝はよほどのアクシデントがないかぎり、フロントロウの2台が逃げる展開で優勝を争い、GT-Rの今季4勝目が堅い展開になる。カルソニックとS Road MOLA GT-Rのどちらが勝つのか、タイヤ、そしてドライバーの勝負になることは明らかだ。
その優勝争いと同じくらい、大きな見どころとなりそうなのが、3位表彰台争い。84kgのウエイトハンデと満タンのガソリンで、かつてなくクルマが重い3番グリッドのMOTULと、前回のSUGOから投入された2基目のエンジンの評判が高いNSX陣営、そして高温下でもっともタイヤのパフォーマンスが高いヨコハマ勢から、6番グリッドのフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R、8番グリッドのWedsSport ADVAN RC Fが一団となって表彰台を争う展開になりそうだ。