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欅坂46、“顔芸”の鈴本美愉と“ポンコツ”の尾関梨香 『徳山大五郎』はコメディリリーフが面白い!

2016年08月06日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)「徳山大五郎を誰が殺したか?」製作委員会

 「犯人をしょっぴきたい!」とクラスの前で高らかに宣言した平手友梨奈。徳山の遺体を隠していた長濱ねるのロッカーを開けるとそこには何も入っていなかった。クラス全員のLINEに「散歩してきます」とメッセージが届き、徳山の遺体は何故かひとつ隣の長沢菜々香のロッカーに移動していたのである。


参考:欅坂46長濱ねる&渡辺梨加、それぞれの役割は? 『徳山大五郎』本格始動に向けて


 『徳山大五郎を誰が殺したか?』第3話では、また新たなミステリーが登場する。こうして幾つも積み重ねることで、少しずつ犯人へと繋がっていく筋書きなのだろう。タイトルにもなっているメインのミステリーに加え、これまでの2話では「誰が徳山の携帯電話を持っているのか?」ということが軸になっていた。そして今回は「誰が徳山と付き合っていたのか?」と、ついに疑惑の目がクラスの中に向けられるのだ。


 事件発生の翌日、昼休みに突然パクチーとマカロンが敷き詰められた重箱を持って教室に現れた徳山の妻。彼女は徳山と顔が見えない生徒が写った写真を持っており、徳山が一ヶ月も家に帰っていないことを告げる。そして、それがこの生徒のせいであると、食べ物の好みから探りを入れようとするのだ。誰も身に覚えがないが、このままでは警察に捜索願が出されると危惧した生徒たちは、たまたま教室にいなかった鈴本美愉を、その相手に仕立て上げるのだ。


 教室に戻ってきてからの鈴本の多彩な表情の変化が非常に面白い。弁当を入れ忘れた自分の母親が来たと思っていた彼女は、「パン買っちゃったよー」とぼやきながら教室に入ってくる。クラスメイトたちの“こいつに決めた”と言わんばかりの表情を見て、ガラリと表情を変えたと思えば、無理矢理に頭を固定されて、写真を撮られた後の放心状態の表情。そこから徳山の妻の前で不倫相手を演じる姿への転換と、なかなかの芸達者ぶりを見せているのだ。


 彼女たちの看板番組である『欅って、書けない?』で5月に放送された「目安箱アンケート」の企画で、織田奈那から表情の豊かさについて褒められていた鈴本。素に近い表情が見られるバラエティ番組でも他のメンバーより際立ったリアクションを見せる彼女は、もしかしたら欅坂46の中で最もテレビ向きのメンバーなのかもしれない。


 劇中でこの鈴本が所属するグループはとくに個性的なメンバーが集まっている。第1話で徳山の遺体を発見した時に、箒で突いていた尾関梨香もこのグループの一人だ。常に肩からカエルのぬいぐるみを提げている彼女。同じように犬のぬいぐるみを抱えている渡辺梨加とはまた違うベクトルで不思議なキャラクターのようだ。


 第1話では授業中に開いてしまったロッカーを占める役割を任命され、席が遠いにもかかわらず机を持って教室の後ろを恐る恐る移動した彼女。この第3話でも、席から立ち上がるときに実に見事な横っ跳びを披露する。その大胆な動きの数々も面白いが、鈴本を呼びに走って教室を出て行ってから、再び戻ってくるまでの遅さに、とてつもないポンコツキャラなのではないかと思わせるところも微笑ましい。


 表情で魅せる鈴本と、スラップスティック演技の尾関は、このドラマのコメディ要素を担う重要なキャラクターであろう。ほかにクラスのまとめ役の守屋茜、常にヘッドホンをしている志田愛佳、探偵に憧れている織田奈那の三人が同じグループ内にいるが、彼女たちが目立つのはもう少し後の回なのだろうか。中でも今回の渡辺梨加の自撮りシーンで、音楽を聴きながら踊り狂っていた志田愛佳はかなり気になる存在だ。


 ところで、校長役の岩松了に続き徳山の妻役でふせえりが登場するのを見ると、ついつい三木聡の演出かと錯覚してしまうけれど、チーフの豊島圭介に替わって第3話の演出を務めたのは、現在放送中の『AKBラブナイト 恋工場』でも数話を担当していた古厩智之である。映画祭などで高い評価を得てきた古厩智之も、豊島圭介と同様に『ケータイ刑事』シリーズの監督を務めてきたひとり。いわば、“美少女×ミステリー”はお手の物というわけだ。ラストシーンで登場する長濱ねるが、とても魅力的に撮られていたのは流石である。(久保田和馬)