先日発足した第3次安倍第2次改造内閣のことを安倍首相は「未来チャレンジ内閣」と名付け、働き方改革を進める方針を打ち出している。
働き方について首相は長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現などに言及していたが、就職活動の在り方も含まれるようだ。4日のNHKのインタビューで、世耕弘成経済産業大臣が大手企業の間で定着している「新卒一括採用」について見直しを促していきたいという考えを表明した。
茂木健一郎氏「新卒一括採用は雇用の機会均等の精神から見て、違法の疑い濃厚」
記事によれば、世耕大臣は新卒一括採用について、「実施する企業は多いが、かなりの比率で新入社員が辞めている。採用される学生も採用する企業も、このやり方は負担だと思っている」と発言。「採用の在り方を見直すことは、働き方改革にもつながる」と考えを示した。
現在、大学生は就職活動の時期になると学生生活が就活一色になってしまうのが普通になっている。学業より就活に精を出すため、大学が「就職予備校」と呼ばれるほどだ。
そういった状態に危機感を持っていた人が多かったのだろう。このニュースにネットでは「素晴らしい動き」と歓迎する声が相次いだ。以前から新卒一括採用を批判していた脳科学者の茂木健一郎氏も5日のブログに、「新卒一括採用の見直しを支持します」と投稿。新卒一括採用のあり方を「雇用の機会均等の精神から見て、違法、ないしは違法の疑いが濃厚」と指摘した上で、こう述べた。
「新卒一括採用は、採用活動によって学生たちの勉強の機会を奪うとともに、企業側にとっても、一時期に大量の志願者が殺到することで、質の高い選考ができないというデメリットがある。他の選択肢は通年採用であり、こちらの方が志願者にとっても、企業側にとってもメリットが大きい」
一方で、見直しを反対する声もある。新卒一括採用が中止されると、社会人としての経験のない学生の就活が不利になるのではないかという意見だ。そのため、「新卒者にとっては競争相手が増えることになる」「学生の就職率下がるやん」と危惧する人も。また、企業側に立って、「教育すべき新人がバラバラの時期に来るの結構つらくない?」という人もいた。
曽和利光氏「若者が3年で辞めるのは今の時代では普通。何が悪いのか」
では、実際採用に携わる人は今回の声明をどのように捉えているのだろうか。新卒採用コンサルティングなどを行う人材研究所代表の曽和利光氏はキャリコネニュースの取材に対し、「新卒一括採用」という言葉の定義が「不明瞭」であると指摘。
「大企業含め、中途採用が当たり前の時代となり、新卒採用以上に中途採用で人を採っている会社もたくさんあります。本当に何を指しているのか分かりません」
と語る。その上で新卒採用が経団連の「時期制限」を指すのであれば、見直しに賛成だと語る。
「採用活動時期を制限することで『新卒採用市場の効率化や学生の学業への注力促進を図る』という方針は間違っていると思っています。ネット動画による説明会やスカイプ面接などを導入することで負荷を減らし、通年採用にすればよいと思います」
だが、今回の新卒一括採用の定義が不明瞭なため、懸念点もある。もし、経験がないと社員になれない、「新卒からいきなり社員にするな」という意味であるとすれば「超反対」だという。
「単に若年層の失業率が上がり、それに応じて、若年層のスキルUPの機会が失われ、全体的な人材力が落ちてしまうでしょう」
また、世耕大臣は新卒一括採用によって「かなりの比率で新入社員が辞めている」と語ったが、これにも疑問を呈した。
「いわゆる『新卒は3年で3割辞める』ということでしょうが、私は3割ぐらい辞めるのは変化の激しい現代のような時代では別に『ふつう』だと思います。20代は混迷の時代です。いろいろ試行錯誤しながら、自分の人生を模索していく時期です。それの何が悪いのでしょうか」
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