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夫婦げんかの末、夫を高速道路に「置き去り」…妻の行為は犯罪では?

2016年08月05日 10:41  弁護士ドットコム

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北海道の高速道路で7月25日、60代の夫婦が車内でけんかになり、夫が道路に置き去りにされる事件が起こった。どうしんウェブによると、事件があったのは千歳と釧路を結ぶ「道東自動車道」の十勝エリア。「(高速道路を)人が歩いている」と通報があり、発覚した。


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妻は「(約10キロ先の)インターチェンジにいる」と伝えて夫を降ろしたといい、実際に車を停めて待っていたという。



高速道路で人を置き去りにするのは、非常に危険な行為と言えるが、妻が罪に問われる可能性はあるのだろうか。富永洋一弁護士に聞いた。



●高速道路上では、原則として駐停車することはできない


「原則として、高速道路上では、駐車や停車が道路交通法により禁止されています(道路交通法75条の8)。



例外的に駐停車が許されるのは次の場合などです。



(1)危険防止のため一時停止するとき。


(2)故障などのため、十分な幅のある路肩や路側帯にやむを得ず駐停車するとき。


(3)料金の支払いなどのため停車するとき。



これらに違反して駐停車した場合や、車両を離れてすぐに運転できない状態にした場合(放置)は、道路交通法(119条の2第1項2号)により、罰則(15万円以下の罰金)または反則金(普通車の場合1万8000円)の対象となります。減点対象(3点)にもなります。



また、すぐに運転を再開できる状態(非放置)の場合でも、道路交通法(119条の3第1項1号)により罰則(10万円以下の罰金)または反則金(普通車の場合1万2000円)の対象となり、減点対象(2点)となります」



では、パーキングエリアや高速バスの停車場など、安全な場所に降ろした場合はどうか。



「『駐車の用に供するため区画された場所において停車し、又は駐車するとき』であれば駐停車違反にはなりません。つまり、パーキングなどの駐車区画での駐停車は、もちろん違反にはなりません。



しかし、高速バスの停留所は、その運行系統のバスしか駐停車が許されていませんので、一般の車が駐停車すると駐停車禁止違反となるでしょう」



●健常者を置き去りにしても保護責任者遺棄罪は成立しない


今回のような置き去り行為をどう評価すればいいのか。たとえば保護責任者遺棄罪などにあたらないのだろうか。



「保護責任者遺棄罪(刑法218条)は、『老年者、幼年者、身体障害者又は病者』が対象です。今回の夫のように、健常者を置き去りにしても保護責任者遺棄罪は成立しないでしょう。



似ているところで、単純遺棄罪(刑法217条)という罪もありますが、この規定も『老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者』が対象です。健常者を置き去りにしても、単純遺棄罪も成立しません」



高速道路を歩くことに問題はないのか。



「高速自動車国道(NEXCO管理の高速道路等)でしたら、高速自動車国道法第17条(出入りの制限等)に違反にあたります。



道路管理員が通行の中止などを命じても、その命令に従わない場合には、同法30条に基づき50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。



国道以外の首都高速や阪神高速などであれば、道路法第48条の11(出入りの制限等)に違反します。



道路管理者が通行の中止などを命じ、その命令に従わない場合には、同法105条に基づき50万円以下の罰金に処せられる可能性があります」



夫は置き去りにされたわけで、やむをえず高速道路を徒歩で移動したとも言える。そんな場合でも処罰の対象になるのか。



「高速道路内に無理やり置き去りにされて、危険回避や救出を求めるため、歩行がやむを得ないようなケースでは罰則を科されることはないでしょう」


富永弁護士はこのように述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
富永 洋一(とみなが・よういち)弁護士
東京大学法学部卒業。平成15年に弁護士登録。所属事務所は佐賀市にあり、弁護士2名で構成。交通事故、離婚問題、債務整理、相続、労働事件、消費者問題等を取り扱っている
事務所名:ありあけ法律事務所
事務所URL:http://ariakelaw-saga.com/