F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、22人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレイを重視して評価する。夏休み直前のホッケンハイムで五つ星を獲得した、ふたりのドライバーとは?
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☆ エステバン・グティエレス
デビューする前は“ジャニーズ系”の少年みたいだったが、ハースでレギュラー復帰してから甘さが消えた。先週はベッテル、今回はリカルドに「青旗だ、さっさと譲れ!」と言われて話題に。しかし彼もまた集団の中で戦っているのだ。ただひとりソフトタイヤでスタート、惜しくもポイント圏外の健闘11位は今季4度目。
☆ ダニール・クビアト
細やかな性格なのだろう。ロシアの若者には、自分を追いこむタイプが最近多いらしい。自ら「いまスランプ」と発言、そう口にすることで、かえって吹っ切れたのか。レースではデビュー初年度のような力走を見せ、カルロス・サインツJr.を上回る自己ベストタイム7位を。トロロッソとの一体感が、ようやく伝わってきた。
☆ パスカル・ウェーレイン
DTM王者には走り慣れたホッケンハイム、ダウンフォースが劣るマノーでインフィールドを果敢に攻めた。絶えず滑りながらセクター3でルノー、ウイリアムズ、ザウバーに勝るセクタータイムを決勝で記録。なんとか1周遅れでのフィニッシュを期待したのだが。
☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
2ストップは無理と判断、3ストップに切り替えて61周目にボッタスを抜き、7位。“インディペンデント・チーム”首位の座を取り戻す。ミディアムを含めて3スペックのタイヤをフリー走行中に徹底チェック、その努力が実る。
☆☆ ジェンソン・バトン
オープニングラップで9番手を確保したのが大きい。ここでは未勝利だが、2位が2回。セクター3の難所“アジップ・カーブ”、インフィールド・セクションでスムーズなラインを。この週末に関しては目の検査を受けたりとトラブルがあったものの、フェルナンド・アロンソより良い流れだった。
☆☆ セルジオ・ペレス
また、はいあがってくるレース。スタートのミスによって16番手に落ちながら、抜きにくいホッケンハイムで10位入賞。トラフィックの中でフロントタイヤが劣化しても、自力でカバー。来季の動向が注目される、いまが旬なドライバーだ。
☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
最速ラップを見れば2位、46周目に新品ソフトタイヤへ交換後の48周目にマーク。だが、すぐに1秒、1.5秒とダウン……タイム推移から現在のマシンはタイヤのグリップに依存し、長持ちさせるにはセーブしていかねばならないのが、よくわかる。とても“賞味期限”が短いのだ。さらに初日セッションから3位→3位→5位→予選6位と、路面温度が低めになるとタイヤのスイートスポットから外れがちな傾向も。耐えて我慢の母国でフェラーリ・デビュー戦、それでもチーム批判はせず。
☆☆☆ キミ・ライコネン
自己ベストタイムは中盤36周目、マシンが軽くなった最終スティントでもペースを上げられない。燃料セーブの制約があり、エコノミーランに徹するしかなかった。今年いちばん地味なレースを黙々と実行。つらいチーム情況で、フェラーリはふたりともやるべきことはちゃんとやっている。
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
7月「連勝の方程式」は、なんと言っても、まずスタート。序盤とは別人のように正確に決め、最適なラインで1コーナーをとる。そして3周目からペース・コントロール、この切り替えが、とても頭脳的だ。パワーユニットのコンポーネンツ5基目を意識して極力抑える慎重さ、繰り返すが、かつてのプロスト流レース・メイキングを思わせる。19点リードしても、まだ十分ではないと、勝って兜の緒を締めるハミルトン。これも前とは別人みたいだ……。
☆☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
レッドブル8戦目の“学習テーマ”はチームプレイ。きわどく見えた1コーナー、ダニエル・リカルドとのバトルは、お互い節度があった。当たってしまうメルセデス勢には、できまい。異なるタイヤ戦略をチーム方針に忠実に実行、29周目のターン6では、ロズベルグのペナルティを引き出す落ち着いた対応も。そして40周目にはチームオーダーに従い、下がった。チームプレイヤーとしては100点満点、もう残る学習テーマは存在しないかもしれない。
☆☆☆☆☆ ダニエル・リカルド
ふたり合わせて<☆10>を奢ろう。フェルスタッペンと共同戦線で挑み、ハミルトンには6.996秒及ばずとも、F1キャリア100戦目をまっとうした。今季2度目の最速ラップも記録。その満足感が表彰台の靴飲みシャンパン、記者会見でのはじける笑顔に炸裂。ここでフェラーリを抜く──レッドブル・チーム全体に戦闘意欲が充満していた。F1の魅力はチーム団体戦でもあり、満喫できるゲームだった。