MacやiPod、iPhoneやiTunesといった革新的な製品やサービスを次々と生み出すアップル。特に日本ではiPhoneの人気が高く、スマートフォンのOSでiOSのシェア率は世界トップだ。新モデルの発売日には各地のアップルストアに長蛇の列ができるのが恒例行事になっている。
そんなアップルが8月2日、公式サイトに「日本におけるAppleの雇用創出」というデータを公開した。「日本全国で71万5千を超える雇用の創出を後押ししてきました」という前向きな内容だが、ネットの反応は芳しくないようだ。
「Appleのイノベーションとテクノロジーなしには起こり得なかったでしょう」
データの内訳を見ると、「iOSとApp Storeのエコシステム関連の雇用」で44万5000人、「Appleの支出と成長の結果、他企業で創出された雇用」が26万9000人、「日本におけるAppleの社員の数」が2900人となっている。
アップルの日本のサプライヤーに対する昨年度の支出額は300億円を超え、「こうした企業の多くはAppleとともに成長を遂げ、Appleの事業にとって重要な役割を担っています」と説明する。
さらに、全世界で500億ドル近いAppストアの売上のうち、90億ドルを超える額が日本の企業に支払われたという。「プログラマー、デベロッパ、起業家などの職業における雇用の増加は、Appleのイノベーションとテクノロジーなしには起こり得なかったでしょう」と自負している。
サイトではあわせて「デベロッパの事例」も紹介しており、ソフトウェア開発会社の「iOSアプリケーションの開発は、日本の市場を超えて数億ものユーザーとつながれるまったく新しいチャンスをくれました」といった声などが掲載されている。
全般的にとてもポジティブな内容だが、ネットではこれに対して「何よこの恩着せがましさは」といった反応が寄せられている。
「取引先の雇用を自分の功績みたいに語るのはみっともない」という指摘も
「巨大なアプリマーケット作り上げた功績は事実なんだが、なんかこうドヤ顔PRされると反応に困る」
「俺が知らないだけで、どっかで『日本の雇用を奪うApple許すまじ!』みたいな反Appleデモでもされたのかな?」
日本の中小企業の中にはアップルと特許訴訟になった会社もある。そうした点も「なんか後ろめたいことでもあるんだろうか?」と、要らぬ疑念を招いているようだ。
また、「雇用創出は企業の社会貢献として評価していい」という人も、アップルが公表している数には疑問があるようだ。「余所の企業の雇用者を取引先だからって自分の功績みたいに語るのはみっともなさすぎる。715000人じゃなくて2900人と書いてドヤ顔しなよ」と指摘している。
ほかにも、「ニートを雇わないと『創出』とは言えないのではなかろうか」という声があり、なかなか厳しい。
トヨタも米国で「36万5000人分の雇用を創出」とアピール
ただ、アップルが雇用創出のアピールをしているのは日本だけではない。本国、米国のサイトには102万7000人の雇用を生み出したと書かれている。また、こういったアピールは日本企業も行っている。トヨタの米国公式サイトの「Fast Facts」(早わかり)コーナーには、「アメリカで36万5000人分の雇用を創出した」という記述がある。
トヨタはかつて、日本で生産した車を米国で販売し、貿易摩擦を経験。その後、現地生産を重視し、地元の雇用創出を図るようになっている。地元の反感を招かないよう、雇用面で米国社会に貢献しているということを伝えたいのだろう。今回のアップルの雇用創出も同じ意図があると推測できる。実際、これを見て、
「自分はやらない善よりやる偽善派なのでどんどんアピってもらえれば良いと思う」
「まあ携帯アプリ開発者からすればめちゃくちゃ参入がしやすくなって断片化も減っていいことずくめだと思うが」
と支持を表明する人もいた。とはいえ、「外資の広報って本国に従うばかりだよな。上手にローカライズしような」「日本でこういう自画自賛は嫌われるから英語でだけ出しとけ感」と抵抗感のある人も。大々的なアピールは日本で受け入れられにくいようだ。
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