アウディはル・マン24時間に向け、将来的に"ハイドロゲン-パワー"によるLMP1マシンを製作することになるだろう、と明かした。
プロダクションモデル部門の技術開発責任者であり、近年ではQ7の48V化と電動ターボディーゼル導入などを指揮したステファン・クニーシュは、水素燃料電池技術によってパワー供給を行うLMP1カー製作の可能性が「大いにある」ことを示唆した。
「私たちが『そのような技術をデモンストレーションしたい』と望んだ場合、それを行うことは可能だろう」
彼のこの発言は、今年はじめに開催されたデトロイト・モーターショーの会期中に、水素燃料電池パワーパックを搭載したFCV『h-tron クワトロ・コンセプト』を発表した際のものではあるが、その後、ル・マン24時間を統括するACOフランス西部自動車クラブによる6月の新規定向けアナウンスで、ル・マン24時間とWEC世界スポーツカー耐久選手権にて、将来的なフューエルセル・テクノロジーの解禁に向け、検討段階に入ったことを明らかにしていた。
アウディのレース部門を担当するアウディスポーツは、現時点でこの技術に関するR&Dを行っているわけではないとしながら、代表を務めるヴォルフガング・ウルリッヒは次のように含みをもたせた。
「現時点ではアウディスポーツとして、そうしたプロジェクトに取り組んでいるわけではないが、それは我々が将来的にそれを直視しない…という意味ではない。もしアウディ本体が、そうした技術の導入に際してサポートすると言ってきたら議論する必要があるが、ディーゼルおよびガソリンを相手にして、水素燃料電池車を導入することは容易ではないだろう」
モータースポーツの分野でFCVへのスイッチを実現するには、市販ロードカーの分野でも、同様にディーゼルからFCVへの転換が求められる、ということでもある。そうしたミラーリングやイメージリンクがなければ、アウディとしても挑戦する意義がないからだ。
クニーシュは、改めていかなるレースプログラムを開始する場合でも、それ以前に「プロダクションでの将来性」を有することが重要だと強調している。
フォルクスワーゲン・アウディ連合は、先のコンセプトカーですでに"第5世代"となる水素燃料電池技術を搭載したFCVを形にしているが、それらはまだ一般のマーケットに投入されるには至っていない。
ACOとFIAは、水素パワーと従来のLMP1-Hを共存させるルールブックを検討するワーキンググループを設置。来年6月に水素導入のためのタイムラインを発表することを目指している。ただし、2021年、または22年より以前に、新たな技術規則が発効する可能性は低いと見られている。
2013年にはガレージ56枠で水素燃料を使用するスイスの『グリーンGT』がエントリーしたが、本戦を前に参戦中止。今年のル・マンウイークにデモンストレーションを行った。また、BMWも生産車部門で燃料電池技術の開発に熱心であることが知られている。そして、トヨタはすでに『MIRAI』によって、水素燃料電池FCVをいち早く市場に送り出している。