世界ラリー選手権(WRC)に参戦するドライバーたちは、大型トラクターをシケインとして使用することは「無責任な行動」と批難の声を上げている。
先週末に行われたWRC第8戦フィンランドでは、ユバスキュラの市街地で行われたステージで、コース上にシケインを設ける障害物として2台の大型トラクターが使用された。各ドライバーは木曜夜と金曜日の合計2回、このステージを走行している。
■ユバスキュラ市街で行われたSS1の様子。ステージ終盤に“トラクターシケイン”が登場する
3年連続のシリーズチャンピオンであるセバスチャン・オジエ(フォルクスワーゲン・ポロR WRC)は、グラベル用タイヤでターマック(舗装)路面を走る場合、特にウエットコンディションではグリップレベルが極めて低くなるとして、“トラクターシケイン”がアスファルト路面上に設けられていたことがもっとも問題だったと語った。
また、一部のドライバーからは2014年のF1日本GPでジュール・ビアンキがけん引トラクターに衝突したアクシデントを想起させるとの意見も出ている。
「レッキを終えた直後から、馬鹿げた行為だと思っていた。FIAは交通安全活動に力を入れているし、F1ではトラクターが絡む悲劇的事故も起きているのだから」とオジエ。
「確かにフォーミュラマシンと比べれば、WRカーはコクピットが覆われている分、少しは安全だし、F1よりはるかに遅いスピードでシケインを通過する。しかし、問題はそこじゃない。(トラクターを使うのは)賢いやり方ではないことが問題なんだ」
「木曜夜のSS1を終えた後に、トラクターを撤去するように求めた。残念ながら、金曜日に同じステージを走った時もトラクターは置いてあったけれどね」
フォルクスワーゲン・モータースポーツ代表のヨースト・カピートもドライバーたちの意見を支持し、「このような行いを認めるとは無責任すぎる。ラリーのステージにトラクターの居場所はない」とコメントしている。
ラリー・フィンランドで競技長を務めたカイ・タルキアイネンは、トラクターをコース上に設置したことは、トラクターメーカーのバルトラとのタイアップ契約の一環だったと説明。「バルトラがコース上にトラクターを置けないかと相談を持ちかけてきた」と述べた。
「我々はFIAとも相談をした上で、今回の決断に至った。あらゆる角度から、想定される事象をすべて考慮した結果の判断だよ」
「FIAと障害物とマシンの間にどれだけスペースが必要かも熟慮して、十分なスペースを作った。具体的なスペースはレギュレーションに記載されていないにもかかわらずだ」
また、タルキアイネンは「大会中、どのチームも私に意見を言いに来なかった」として、不満の声が出ていることに「驚いている」としている。