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KinKi Kidsとタッキー&翼、ジャニーズにおける「二人組」の魅力を分析

2016年08月03日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 いまアイドルの世界は、グループ全盛だ。ソロで活躍しているアイドルももちろんいるが、例えば1980年代の頃などと比べるとその数はかなり少ない。


 ただ、一口に“グループ”と言っても、その構成はさまざまだ。とりわけ女性アイドルに顕著だが、最近は大人数のグループが増えている。ジャニーズでも、関ジャニ∞が7人、Hey! Say! JUMPが9人、Kis-My-Ft2が7人、ジャニーズWESTが7人と大所帯のグループが増加中だ。


 それに比べると、二人組のデュオは少数派と言っていい。いままで期間限定ユニットやグループからの派生ユニットでデュオは何組か存在したが、活動の基本が二人というパターンは多くない。だが二人組には、大所帯グループにはない何かがある。それは、グループのなかでのカップリングともまた違うだろう。今回は、そんな貴重なジャニーズデュオの魅力を探ってみたい。


 ジャニーズの歴史のなかで初めてデュオでデビューしたのが堂本光一、堂本剛のKinKi Kidsだ。いわば彼らが、ジャニーズのデュオの歴史を切り開いてきたと言える。今年2016年は、大ヒットした『硝子の少年』(1997)でのデビューから20周年目に突入する節目の年でもある。


 二人の関係性を象徴するのは、何と言っても「相方」という呼び方だろう。


 元々堂本剛にお笑い志向があること、また二人が偶然同姓で関西弁をしゃべることもあるが、二人の会話や間には確かに漫才コンビを思わせるところがある。つい先日出演した『バズリズム』(日本テレビ系)でも、エピソードトークから二人でのネタのような展開に自然になり、MCのバカリズムから「ベテラン漫才師のたたずまい」といじられ、「ジャニーズ、ジャニーズ!」と堂本光一が否定する一幕もあった。


 ただバカリズムの評言は、言い得て妙でもある。兄弟や友人ともまた違う、「相方」という関係性。それは、独特の強いパートナーシップ、信頼関係で成り立っているものだろう。お互い連絡先も知らないという二人だが、いざ“KinKi Kids”になった瞬間、まるで打ち合わせたかのような掛け合いが始まる。


 それは、トークだけでなく、歌などのパフォーマンスにも言えることだ。


 二人のソロ活動は、ある意味対照的だ。堂本光一がミュージカル『Shock』シリーズなど舞台中心に実績を重ね、堂本剛はミュージシャンとして独自の世界を構築している。


 そして最新シングル『薔薇と太陽』のパフォーマンスでは、それを踏まえた試みがなされている。光一が女性ダンサーを従えてのダンス、剛がバンドを従えてのギター演奏をしながら歌うという演出だ。


 異質なものを組み合わせる大胆な試みである。だがそれでも、見事に統一された世界観を構築しているのは、さすがKinKi Kidsといったところだ。これなどを見ると、デュオには異なる個性のアンサンブルをくっきり出せる利点があるのがわかる。


 もう一組のジャニーズデュオ、タッキー&翼は、KinKi Kidsの少し後輩にあたる。


 メンバーである滝沢秀明と今井翼は、1990年代後半から2000年代初頭のいわゆる「ジャニーズJr.黄金期」の中心メンバーだった。ジャニーズ事務所への入所日も1995年の同じ日というから、二人の縁は深い。


 滝沢秀明は、今年に入って『鼠、江戸を疾る2』(NHK)、『せいせいするほど、愛してる』(TBSテレビ系)とドラマ主演が続いている。後者では劇中で披露するエアギターも話題だ。


 そうしたなか出演した7月8日放送の『A-Studio』(TBSテレビ系)では、後輩であるKis-My-Ft2・北山宏光やSnow Man・深澤辰哉とのエピソードが紹介されていた。やんちゃだったり、覚えがいまひとつだったりする後輩のjr.がいても決して叱らず、二人で頻繁に食事に行くなどしてコミュニケーションをとりながら、少しずつ成長していくのを見守る。その“優しさ”は、ジャニー喜多川を見習ったものだと語る滝沢秀明。そこから彼が「小さなジャニーさん」と呼ばれているという話で番組は盛り上がっていた。


 そうした“優しさ”は、タッキー&翼自身にも通じるところがありそうだ。2002年のデビュー以来の二人の足跡を見ると、二人は決してあせらず急がず「タッキー&翼」というユニットを育んでいるように思える。


 デビュー前から他のジャニーズJr.とともに、そしてデビュー後もコンサートやツアー公演を積み重ねてきた二人だが、2014年には今井翼が体調不良のためコンサートツアーに出演できなくなるというアクシデントもあった。だがそのピンチも、滝沢秀明が一人で予定通りにこなして乗り切った。そして今井翼の復帰後、今年は初の正月公演を実現させた。


 ソロ活動でもそれぞれ着実だ。滝沢秀明は、自ら座長・主演を務め、現在は脚本・演出も担当する『滝沢歌舞伎』を10年以上続け、昨年はジャニーズ舞台作品としては初となるシンガポール公演を実現させた。今井翼も得意のダンスを生かしてミュージカル『PLAYZONE』の主演を2010年から務め、『バーン・ザ・フロア』日本公演のスペシャルゲストダンサーにもなった。また本格的なフラメンコをスペインで学び、自ら主演し、振付も担当した舞台『World’s Wing 翼 Premium』で披露もしている。


 かつてジャニー喜多川は、蜷川幸雄と対談したラジオ番組で、「アイドルづくりは人間づくり」であると語ったことがある。「成長しない子はいない」というのがジャニー喜多川の持論だ。


 その意味で、ジャニーズJr.が成長していく姿こそが、ジャニー喜多川、ひいてはジャニーズの哲学を物語るものと言っても過言ではない。Jr.時代からの絆をベースに、一歩一歩階段を確実に昇っていくタッキー&翼の姿は、いわばそんな「ジャニーズらしさ」の象徴である。


 考えてみれば、KinKi Kidsの二人が『薔薇と太陽』で見せたダンスとバンドのコラボにしても、ジャニーズの歴史をかたちづくってきた二つのパフォーマンススタイルを融合させたものととらえられるだろう。つまり、それもまた「ジャニーズらしさ」のひとつの象徴だ。


 二人組であるデュオには、そのシンプルな編成ゆえにジャニーズの理念や歴史がより純粋なかたちで表れるということだろうか。ジャニーズの活動分野は、ますます多彩なものになってきている。そのなかでKinKi Kidsとタッキー&翼は、ジャニーズの忘れてはならない「原点」を、それぞれの魅力的なパフォーマンスを通じて思い出させてくれる存在だといえるだろう。(太田省一)