僕は1984年の生まれだが、物心つく頃には、家族も親戚も、みんなタバコを愛好していた。必然と家屋の白い壁はヤニで黄色っぽく濁り、ガラスなんてのもくすんだ茶色がかって見えたものだ。
それはそれで昭和の思い出として今となっては懐かしいんだけども、ヘビースモーカーだった祖父が晩年は喫煙によって弱った肺にかなり負担がかかっていたことを考えると、タバコについては思うところもある。(文:松本ミゾレ)
健康意識が向上、男性の喫煙率も初めて3割切る
日本たばこ産業(JT)が7月28日、2016年度の「全国たばこ喫煙率調査結果」というものを発表している。これによると、成人男性の喫煙率は29.7%となっているが、これは1965年の調査開始以来最低の数字で、史上はじめて3割以下になったということだ。
成人女性の場合は前年比0・1%増の9.7%となっているが、男女あわせた喫煙率は、前年比0.6%減の19.3%となり、こちらも過去最低の数字になっている。この理由についてJTは、高齢化の加速や健康意識の向上、街中に喫煙エリアが減ってしまったこと。さらに4月に一部銘柄が値上げしたことが影響していると分析している。
このように、日本全体のタバコのシェアは、年々縮小傾向にあるということだ。うん。そうですか、よかったですね、と喜びたい。
副流煙も忌み嫌われる、街の喫煙所も景観的にイマイチ
そもそもタバコって、吸い続けることで健康を害するリスクがある。喫煙者はそれを分かってて吸っているんだけど、その家族や同僚までもがタバコ好きとは限らない。煙や匂いがダメという人もいるし、そういう人にとっては喫煙者と一緒にいるのは苦痛だ。
また、副流煙で周囲の人々までも健康被害を受けるため、できればタバコには廃れてほしいと思っていた人も少なくないはずだ。特に非喫煙者の中には、とにかくこの副流煙を忌み嫌う人も目立つ。
彼らにとっては、他人の嗜好のせいで自分の健康を脅かされることや、匂いが自分の衣服に移ることなど、我慢ならないポイントはいくつも思い当たるのだろう。
それから、タバコを吸わない人にとっては、街中の喫煙スペースに固まって、いい大人が一様にタバコを味わっているという光景も、異様なものに見える。景観としても美しくない。
また、昨今のサラリーマンのお小遣い事情では、タバコを毎日購入するのがきつい、ということもあるだろう。そういう人々は、いっそ禁煙することで、お小遣いを温存できるということになる。タバコをやめるメリットは大きい。
今となってはタバコは時代遅れ、昭和のあの光景は一体なんだったのか
昭和の時代には、そこかしこに喫煙者がいた。当時は喫煙所なんてほとんどなかったし、どこでもスッパスッパと吸えたものだ。電車のボックスシートの窓際にも、タバコを置く灰皿が設置されていた。
それから、病院の待合室にも灰皿があった記憶もある。というか、病院によっては診察室に入ったら医師が思いっきりタバコを吸っていたこともあった。道端にはタバコの吸殻も、今よりもっと多かったし、学校では職員室もタバコ臭かった。昭和から平成の初頭にかけては、喫煙は大人なら当たり前みたいな雰囲気はあったものである。
しかし、今となってはメリットよりも遥かにデメリットの方が大きく知られている。時代も違う。喫煙率の低下は、まさにこの、時代の変化を如実に反映している数字だ。「他人の吐き出す有害な煙を吸いたくない」と感じる非喫煙者は、今後増えることはあっても、もう減ることはないだろう。
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