WRC2に参戦した勝田貴元/D.バリット組のフォード・フィエスタR5 TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラムの育成ドライバーとして、フィンランドを拠点にトレーニング中の勝田貴元、新井大輝が、7月28-31日に開催されたWRC世界ラリー選手権第8戦、ラリー・フィンランドに出場。そろって念願の世界選手権デビューを果たし、勝田貴元/ダニエル・バリット組は堅実な走りでクラス12位、総合27位で完走。新井大輝/グレン・マクニール組は最終日まで安定した走りを継続していたが、SS22でリタイアとなった。
先日、WRCデビューの前哨戦として、ERC欧州ラリー選手権のエストニアラウンドに出場。高速グラベル路の習熟を目指して選択したイベントではあったが、両者ともに慣れない速度域、ペースノート作成の経験値不足からクラッシュ、リタイヤとなっていた。
そんななか世界戦デビューの舞台に選んだのは、WRC伝統の1戦であり、両ドライバーが昨年よりトレーニングの拠点としているユバスキラ(フィンランド)で開催されるイベント。シリーズの中でも最速のアベレージスピードを記録する超高速グラベルステージは、200km/h超で離陸するクレスト越えのコーナーや、コースサイドに立ち木の迫るマシン1台分のナローなステージを5速、6速フラットアウトで攻めることが求められる、特殊かつ高難易度の1戦でもある。
今回、WRC2クラスに参戦したふたりは、完走することを今回の参戦の第一目標とし、チーム関係者や地元ファンからの大きな声援を受けながら、4日間で総SS距離333.99キロを競うラリーに挑んだ。
新井はデイ3のSS16でクラス6番手タイムを記録するなどリズムをつかみ始めていたが、最終日デイ4のSS22でワイドになり、アウト側の立ち木にリヤをヒット。2ステージを残してリタイアという惜しい結果となった。一方、完走狙いに徹して充分なマージンを取った走りを続けた勝田は、途中葛藤の表情を見せながらも、ミッションを完遂しポディウムに到達した。
「新井のリタイアは非常に残念だったが、2人とも十分な競技距離を走行し、世界レベルのラリーがどんなものかを理解することができたはずだ。この経験をもとに、また新たな一歩が踏み出せると考えている」と話すのは、このプログラムのインストラクティングを務めるヨウニ・アンプヤ。
勝田は「まずは目標だった完走ができてうれしいです。途中パンクやパワステのトラブルもありましたが、そういう経験もしながらフィンランドという特殊で難しいラリーを最後まで走りきれたことは自信につながりました。長い4日間のラリーは精神的に厳しかったですが、常にコミュニケーションを取り、僕をコントロールしてくれたダニエルにとても感謝しています」と語れば、リタイヤに終わった新井は「今回は残り2本というところでリタイアに終わってしまい、とても悔しいです。 今回のミスをひと言で表すのは難しいのですが、自分のペースノートに迷いがあったことが一番の原因だと思っています。次戦までに課題を明らかにして、集中して取り組んでいきます」と、この特殊な"3次元的"理解が求められるラリーでのペースノート作成の難しさを語った。
勝田、新井は次戦、8月19-20日に行われるフィンランド国内選手権第5戦に参戦する予定となっている。