7月31日に投開票が行われ、小池百合子氏が当選した都知事選。報道によれば、今回の都知事選の投票率は平成に入ってから2番目に高い59.73%。都民の関心が高かったことがうかがえる。
投票所では、訪れた有権者に対して「ご苦労様です」と声を掛けるスタッフや職員もいる。しかしこれに疑問を呈す人もようだ。法政大学教授で北海道大学名誉教授の山口二郎氏(@260yamaguchi)は、ツイッターにこう投稿し、物議を醸している。
「先程投票に行ってきたのだが、投票所にいる区役所の職員に3回ぐらい『ご苦労様、ありがとうございます』と声を掛けられて違和感を覚える」
ニセコ町長は「笑顔で寛容をお願いします」とコメント
山口氏が違和感を覚える理由は、「主権者が権利を行使することについて行政に礼を言われる理由はない」ためだという。確かに、考え方の一つとしてあるだろう。だが、この山口氏の投稿には、「考えすぎでは」「器が小さすぎる」といった反応が相次いだ。
「素直に受け取れば宜しいではないですか? 投票所まで出向いてくれてご苦労様です。って意味なんですから」
「『行政』が『主権者』に礼を言ったんじゃなく、『人間』が『人間』に対して声をかけただけやろ?」
中には、給食で「いただきます」や「ごちさうさま」をいうことに対して「給食費払っているのに強制はおかしい」と難癖を付けるようなものだという指摘もあがった。北海道ニセコ町の町長の片山健也氏もFacebook上で、
「山口先生、挨拶のひとつだと思います。私も投票所担当のときは、やっていました。どうか笑顔で寛容をお願いします」
となだめている。実際寛容的な人が多いようで、ツイッターでは「ご苦労様です」と声を掛けられ、「うちの家族はみんなスタッフに『お疲れ様です』って頭下げて投票所出たけどな―」という人もいた。
大阪府知事選では「目上のものに使う言葉ではない」とキレる有権者も
一方で、「ご苦労様」という言葉自体が気に入らないという人もいるようだ。ツイッターでは、「ご苦労様」は目上の人が目下の人に使う言葉だとして憤りをあらわにする人も少なくない。
「今日選挙行ったら、座ってたおっさんにご苦労さんとか言われたんだけどマジなんなの? お前どんだけ偉いか知らんけど、お前に上から目線で言われる筋合いねぇし」
「投票箱に入れたあと、係数人にご苦労様です。と言われてムカついた。お前らと身分の上下関係結んだ覚えないぞ。本当にご苦労様です。って言葉ムカつく」
昨年11月22日に投開票が行われた大阪府知事選では、70代の投票管理者に「ご苦労さんです」と声をかけられた47歳の会社員の男性が「目上の者に使う言葉ではない」と激怒。投票管理者に平手打ちをするという暴行事件も発生している。実際のところ、「ご苦労様」は目上の人に対しても使える言葉ではあるものの、誤った認識として広まってしまっているようだ。
「ご苦労様」と声を掛けられることに配しては、「礼を言われる理由はない」「上から目線で言われる筋合いない」という2つの考え方があるようだが、どちらも気にしすぎと言えそうだ。ネットには、「職員『暑い中ご苦労さま』 有権者『そちらこそご苦労さまです』優しい世界」という投稿もあった。お互いがお互いを思いやって「ご苦労様」と言い合えることが望ましいのではないだろうか。
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