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固定資産税のかからない「キャンピングカー生活」本当に節税になるのか、税理士が検証

2016年08月01日 11:12  弁護士ドットコム

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「キャンピングカーがあれば、車を停めたその場所が家なのです」「毎日同じ場所に帰るなんて非効率すぎる」。大学卒業後に始めた、キャンピングカーでの生活をつづった男性ブロガーの記事がネット上で話題になった。


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気ままに移動しながら暮らすことができるのが利点だが、ネット上では、普通車よりも税金が安いことや、住宅と違い、固定資産税がかからないという税金のメリットを指摘する意見もあった。



住所が定まらないキャンピングカー生活だと、本当に税金が安くなるのだろうか。佐原三枝子税理士に聞いた。



●「家にかかる固定資産税からは解放されます」


「まず、キャンピングカーも車ですから、自動車関連の税金がかかります。



キャンピングカーは8ナンバーという警察車両や消防車と同じ特殊車両に区分されます。そのため、自動車税は同じ排気量の3ナンバーの普通自動車より若干安くなります。



取得時にかかる自動車取得税は変わりませんが、購入時や車検時に支払う自動車重量税も自動車税同様安く設定されています。ただ、8ナンバー車は新車時の車検が2年目にあるので、3ナンバーより1年車検が短くなります。



キャンピングカーに改造されることの多いハイエース(排気量2700L)で比べると、税金や車検などの法定費用6年間分で普通車との差は13万円くらいと言われており、8ナンバーが節税になるというほどのメリットは感じられません。



しかし、キャンピングカーで生活することで、家にかかる固定資産税からは解放されます。たとえ寝泊りできても、キャンピングカーはあくまで車両なので、固定資産税はかかりません。都市部に家を持つより自動車関連の税金のほうが安いと思われますので、この点は節税になるでしょう」



では、住民税はどうだろうか。



「まず、住民税の課税の仕組みを説明しましょう。個人の所得には、国税である所得税と地方税である住民税(県、市民税)がかかります。



サラリーマンの方なら、毎月のお給料から、その毎月のお給料に対応する所得税を概算で徴収されます。年末に1年間の収入と扶養家族、社会保険料などの控除、徴収された所得税を集計して再計算し、還付もしくは徴収して税金を清算します。これを年末調整といいますが、年末調整は所得税だけの制度です。



一方、住民税はこのようにリアルタイムで計算されません。住民税は、勤務先の会社から住所地の市町村に年末調整のデータが送られ、市町村がそれに従って住民税を計算します。その結果は、翌年の5月に勤務先の会社に通知され、6月のお給料から12回に分けて徴収されます。途中で退職すれば、その後の税金は自分で納めます。



このように、住民税の徴収は常に前年のものになります。住民税はどこの市町村が徴収するかというと、1月1日に住所地があったところになります」



では、1月1日の時点で、すでにキャンピングカーで旅に出ていた場合はどうなるのか。



「住所地は住民基本台帳に記載された住所を使用します。転出届を出したにもかかわらず、転出先の市町村に住民票を移動しなかった場合には、転出元の市町村に住民登録が戻ってしまいます。つまり、住民登録の登録期間に空白を作ることはできないのです。



ですから、前年に課税所得がある方なら、年末までに死亡、もしくは海外へ転出していなければ、翌年の住民税の徴収から逃れることはできません。



キャンパーの中には有名なブロガーの方もいてアフェリエイト収入などを得て、個人事業主として確定申告しています。移動が多いので、実家などの住所で住民登録をして申告しておられるようです」



佐原税理士は最後にこう釘を刺す。



「転出元の住所に住民登録が戻ったところで、そこには何もないから市役所からの通知が届いても逃げ切れる、という猛者がいるかもしれませんが、健康保険や免許の更新、選挙の通知など日常生活に支障が出ることが考えられますし、住所不定になることで失う社会的信用は計り知れません。



キャンピングカー生活と住民税から逃れることは別物です。新しいライフスタイルとなりそうなキャンピングカー生活を根付かせるためにも、税金に対する正しい理解をお願いしたいと思います」




【取材協力税理士】


佐原 三枝子(さはら・みえこ)税理士・M&Aシニアスペシャリスト


兵庫県宝塚市で開業中。工学部やメーカー研究所勤務から会計の世界へ転向した異色の経歴を持つ。「中小企業の成長を一貫してサポートする」ことを事務所理念とし、税務にとどまらず、経営改善支援、事業承継や海外事業展開の支援を手掛けている。


事務所名 : 佐原税理士事務所


事務所URL:http://www.office-sahara1.jp/


(弁護士ドットコムニュース)