2016年08月01日 10:02 弁護士ドットコム
酔った勢いや情にほだされて、一度だけ肉体関係を持ってしまった。そんな「ワンナイトラブ」の話は少なからず聞きますが、自分や相手が既婚者だった場合、泥沼トラブルに突入してしまう可能性があります。
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弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、自分や配偶者が一度の過ちを犯したことで、離婚調停や慰謝料請求へともつれこんだ人々から相談が寄せられています。
・Aさん(女性)「主人の不倫、異性との肉対関係を理由に離婚調停中です。たった一度でも、既婚と知りながら肉体関係を結んだ相手にも慰謝料を求めたいと思っています。精神的苦痛を受けたということで慰謝料を請求することは可能だと思うのですが、こんなたった1度の関係を恨んで請求するケースは少ないのか、私が小さい人間なのか、などと悩んでおります」
・Bさん(男性)「不貞行為が妻に知られ、現在は妻が実家に帰っています。その不貞行為は1回だけのものですが、相手は私が既婚者と知ってのことです。もし離婚となり、慰謝料を請求された場合、有責者、相手への慰謝料はいくらが妥当でしょうか?」
・Cさん(女性)「先日相手の妻から、300万の慰謝料請求の通知書が送られてきました。私は男性が既婚者だったとは全く聞いておらず、通知書で初めて知りました。私は男性からアプローチを受けておりました。一度だけ男性と不貞行為がありました」
たった一度の不貞行為でも、離婚理由になるのでしょうか。また、慰謝料はどのくらいが妥当なのでしょうか。渡邊幹仁弁護士に聞きました。
●1回の不貞行為でも離婚原因となる
民法770条1項では離婚原因の一つとして「配偶者に不貞な行為があったとき」と定めています。この「不貞な行為」とは、配偶者がある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと、とされています。そして、「性的関係を結ぶ」ということがあれば「不貞な行為」に該当し、その回数は原則として関係ないということになります。
この点について、民法770条2項では、離婚原因があっても、「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる」(離婚を認めないことができる)としています。したがって、「一度だけ」という事情などを考慮して、離婚が認められない場合もあるようにも思えます。
しかし、現状としては、民法770条2項に基づいて離婚が認められない、ということは「ほぼない」と考えていい状況です。したがって、一度だけの不貞行為でも離婚原因となり、裁判で離婚が認められる可能性が高いと言えます。
●慰謝料はどのくらい?
慰謝料の金額は、不貞関係の期間や回数のほか、不貞関係が始まった経緯や、不貞が始まった時点での夫婦関係、夫婦の婚姻期間、不貞によって別居・離婚となったか否か、子の有無、年齢及び子に与えた影響、不貞が発覚したあとの態度など様々な要因によって決まります。
一概には言えませんが、夫婦関係が良好だったけれども、不貞が一度だけあったために離婚したというケースであれば、慰謝料の金額は100万円~150万円程度になることが予想されます。
なお、上記Cさんのケースでは、相手男性が既婚者と知らずに一度だけ不貞があったということです。Cさんが責任を負うには、相手男性に配偶者がいることを知っていたという事情が必要です。Cさんがそのような事情を本当に知らず、知りようがなかったと言える場合には責任が生じず、慰謝料を支払う必要はありません。
しかし、そもそも「本当に知らなかった」と認められるかどうかが、一つの問題となります。例えば相手男性が同じ職場だったり、同じ学校のPTA同士だったりして関係が近い場合や、相手男性の言動から既婚者だと知り得る状況にあった場合には、「本当に知らなかった」と認められる可能性は低くなります。
また、仮に本当に知らなかったとしても、知ることができる状況だったとして、知らなかったことに過失があったとされる可能性があります。その場合は、Cさんが責任を負うと考えられます。ただし、相手男性が既婚と知りながら不貞を行った場合と比べて、慰謝料の金額は減額される可能性があるでしょう。
【取材協力弁護士】
渡邊 幹仁(わたなべ・みきひと)弁護士
新潟県弁護士会所属
離婚・親子関係などの家事事件、男女問題、不法行為に関する事件を数多く取り扱っている。
事務所名:新潟菜の花法律事務所
事務所URL:http://niigata-nanohana.com/index.html