「トストさんにトイレで会ったら『ホンダは速いよ』って怒られました」
F1ドイツGPの金曜日、長谷川祐介ホンダF1総責任者は微笑みながら、興味深いエピソードを語った。フランツ・トストはトロロッソの代表だが、無理もない。初日フリー走行の順位はマクラーレン・ホンダの2台が8位と10位だったのに対して、トロロッソ勢は11位、12位だったからである。
しかし、長谷川総責任者は「エンジンそのものの性能としては(ホンダが、トロロッソが使っている)昨年のフェラーリ(パワーユニット)を抜いたと、はっきり言えるレベルにはないと思っています。総合力では、かなりいいところに来ているとは思いますが……」と慎重な姿勢だった。
パワーユニットの性能に関しては、ハンガリーGP後にレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表が「ルノーはメルセデスに対して35kW(約47.5馬力)パワーが足りていない」と語ったが、長谷川総責任者は「トークンを使用したモナコGP以降のパワーユニットに関していえば、そこまでの差はないと思っています」と推し量っていた。
そこで、ホーナーの発言についてメルセデスのあるエンジニアに確認を取ってみると、スマートフォンに残っているデータを見ながら、興味深い分析を教えてくれた。
「35kWの差はない。正確に数字は教えられないけど、もっと小さい。もちろんフェラーリと(メルセデス)の差は、さらに小さなものだ。我々の分析では、現在のパワーユニットの序列は、トップがメルセデスで2番手がフェラーリ、そして3番手のルノーに、ホンダが僅差で4番手に続いている。トロロッソが使っている昨年型のフェラーリ製パワーユニットが最下位であることは間違いない」
ちなみに、そのエンジニアはGPSのデータもチェックして「低速コーナーではレッドブルのほうが我々(メルセデスF1チーム)よりも車速が速い」と教えてくれた。それでも余裕のそぶりを見せているのは、21戦すべてのサーキットに合わせた開発はできないからだという。
「たとえ低速サーキットでレッドブルに劣っていても、落とすグランプリは、モナコ、ハンガリー、シンガポールの3つだけ。それでも、そのうちのふたつで勝ったんだから問題ないよ」