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AV出演強要「インディーズ作品」も課題に…個人撮影や無修正動画、対策が困難

2016年07月31日 10:41  弁護士ドットコム

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アダルトビデオ(AV)出演強要問題が大きな注目を集めている。NPO法人ヒューマンライツ・ナウが今年3月、被害実態を発表したことから社会問題化。政府が調査開始を決めたり、大手AVプロダクションの元社長らが労働者派遣法違反の疑いで逮捕されたりと、大きな動きが続いている。


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被害者の支援団体「ライトハウス」と「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)」によると、相談件数は増加傾向にあり、2016年は7月段階で前年の62件に並んだ。現行法では救済が難しい場合も多く、支援団体は立法による解決や業界の体質改善を求めている。



●現行法では「強要罪」などでの立件は困難


支援団体によると、出演強要の被害を訴えても、強姦罪や強要罪などでの立件は難しいという。契約書などによって、同意があったとみなされるからだ。支援団体は、出演強要問題が大きくクローズアップされる以前から、被害を訴えている女性を伴って、警察に相談してきたが、契約書や金銭の受け取りを理由に「門前払い」されることが多かったという。



支援団体は立法により、モデルやタレント募集を偽装した勧誘の禁止や、契約解除・販売停止などを簡便に行えるよう求めている。政府が6月、出演強要の被害実態を調査することを閣議決定したことから、今後、規制が検討される可能性がある。



●プロダクションと女優の関係性


出演強要問題で特に問題視されているのが、女優とプロダクションの力関係だ。本来、個人事業主の女優とプロダクションは対等関係。しかし、支援団体の報告では、女優の立場が低く、プロダクションに逆らえない状況が生まれている。



この点が問われたのが、6月に起きた大手AVプロダクション「マークスジャパン」の元社長ら3人が労働者派遣法違反の疑いで逮捕された事件だ。女優が、実質的な「労働者」とみなされれば、労働者派遣法や職業安定法に抵触する可能性がある。労働者を派遣するには厚生労働大臣の許可がいるし、そもそもAVへの出演は法律上、労働者の派遣が認められていない業務だと考えられるからだ。



プロダクションは業界にとってなくてはならない存在でもある。業界には、大手プロダクションから逮捕者が出たことで、「このままでは業界が潰される」という危機感が生まれたという。



●業界内部でも「自浄」の動きが始まる


業界側にも言い分はある。近年は、自発的にAV女優になる女性が増えており、かつてに比べて問題は減っていると考えているからだ。強要問題で、業界に対する風当たりが強まると、ネット上には「業界全体が悪いわけではない」という関係者からの書き込みが相次いだ。



現在、業界内部では、自浄作用を示すため、問題が起きづらいシステム作りが始まっている。大手メーカーなどでつくる業界団体「知的財産振興協会(IPPA)」は、支援団体と話し合いの場を持ち、6月22日付で声明を発表。「プロダクションにも働きかけ業界全体の健全化に向け早急な改善を促していきたいと思っております」と表明した。



また、出演者側でも、AV出演者らによる団体「表現者ネットワーク(AVAN)」が7月に発足。元AV女優の川奈まり子さんが代表に就任した。



業界内部には、現在のシェアを守らないと、団体に加盟しない「インディーズ」や「同人」の増加を防げないという懸念もある。具体的には、無許可の撮影や無修正動画などだ。消費者がより過激なものを求める以上、多少の違法行為を伴っても、商品を提供しようとする業者が出てこないかが危惧されている。実はこの点では、支援団体も一致している。



ライトハウスの藤原志帆子代表は、「今は誰でもポルノを作れるし、日本人が見るポルノが海外から逆輸入されている。業界が浄化されたところで、海外サーバーから流されると太刀打ちできないという懸念があります」と語っている。



【編集部より】


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(弁護士ドットコムニュース)