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妻の服代を「経費」にする芸術家の夫「作品のイメージが湧く」、そんなのアリ?

2016年07月31日 09:42  弁護士ドットコム

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「君が新しい服を着たらイメージが湧いて作品に想いを込めれる。だから経費だ」。そんな理屈で、なんでもかんでも「経費」にしようとする芸術家の夫に疑問を持つ妻から、税理士ドットコムの税務相談コーナーに相談が寄せられた。


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相談者の夫はフリーランスの芸術家で、自分で確定申告をする必要がある。夫は、妻の服の購入費は「経費」だと考えてて、相談者に「服買ったらレシートちょうだい」と求めてくるそうだ。相談者が拒否すると「家族なのにどうして協力してくれないんだ」とキレられてしまうという。



相談者は「税務調査が入ったら怖い」と夫の考えに不満を持っているが、夫のやり方は通用するのか。柴田哲義税理士に聞いた。



●「イメージが湧く」「思いが込められる」だけでは、判断が難しい


「『事業に関わる支出』は経費ですし、『事業と関係ない生活に関わる支出及び生活に通常必要ない支出』は経費には該当しません。



ただ、この区分けは、竹を割ったようにできるものでなく、業種固有、各事業者固有、各事案固有で判断が必要になることも多々あり、形式や一般論だけで判断できないものは事実認定によることになります」



では、例えばどんな支出なら経費と認められるのだろうか。



「例えば、衣服やトレーニングの支出について、一般の人にとっては経費の概念はなくとも、スポーツ選手にとっては経費性を帯びてきます。また、モデル業の女性にとっては、美容や体形を維持・向上させるための支出も同様です。



ダンサーがステージで着るためのものや、レッスン固有で着るものは経費としての要素も多々あるはずです。また、コンサートやイベントのチケット代は、一般には趣味・娯楽の支出ですが、音楽・映像に関わる人にとっては研究や資料費的な意味合いも出てきます」



今回のケースの『芸術家の夫にとって、イメージの源泉となる妻の着る新しい服』は経費と考えて良いか。



「全く経費にできないと断定できませんが、非常に難しいところでしょう。例えば、2枚の同じTシャツがあったとして、1枚は芸術作業のみで使用していれば作業着と認識できるはずです。



今回のケースで経費かどうかの判断が難しい理由は『イメージが湧く』『思いが込められる』という客観性が乏しく、立証が難しい点にあります。逆に言うと妻の新しい服の全てを、夫がイメージに役立ったと言い張っても納得できる人はあまり居ないと思います。



具体的に、新しい服がどのようにイメージの源泉となり、そのイメージがどの作品を生み出し、結果として事業の売上に貢献している支出であることを、具体的に立証する必要があります。事例をいくつか説明できるようにした上であれば、衣服についても経費性を認められる余地はあると思います」


柴田税理士はこのように述べていた。



【取材協力税理士】


柴田 哲義 (しばた・てつよし)税理士


税理士事務所勤、経営計画・事業承継に特化した公認会計士事務所での勤務を経て1991年に独立。顧問先である約60社の中小企業の多くは、開業以来からも含め15年~20年来の緊密且つ強い信頼関係で関与を続けている。依頼者にとって有益・有用な存在であることを絶えず目指し、また税務調査対応の実績に対し高い評価を受ける。


事務所名:柴田税理士事務所


URL:https://www.zeiri4.com/p_tokyo/a_13103/f_1575/



(弁護士ドットコムニュース)