ここまでの2戦は、嵯峨選手と中山選手の駆る「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」にとって苦戦が続いた。完走を果たすのみのレース結果となってしまったが、黙って手をこまねいていたわけではない。オートポリスで行われるはずだった、第3戦こそ熊本地震の影響で中止となりブランクが生じたものの、その間に行われた公式テスト、そしてタイヤメーカーのテストに参加。多くのメニューをこなして、マシンに磨きをかけ、一段も二段も進化を果たしていた。
公式練習 7月23日(土)9:15~10:57 レースウィーク最初の走行となる、公式練習でまず「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」をドライブしたのは嵯峨選手。路面状態が整うのを待って、しばらくピットで待機することもあるが、SUGOでは赤旗が出ることが多く、中断によってメニューを十分にこなせない可能性も無いわけではない。ましてテストで負った傷が癒えているか確認の意味も含み、開始と同時にピットを離れていく。
公式予選 Q1 7月23日(土)14:30~14:45 今回、Q1を担当したのは中山選手。公式練習以上に赤旗が出る可能性もあるため、計測開始と同時にピットを離れていく。気温は21度、路面温度は26度と低めだったこともあり、ウォームアップはいつも以上に入念に行われ、実に3周を充てることに。最初のアタックこそ1分22秒338と不発に終わるも、次の周には1分18秒170をマークして「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はトップに躍り出る。この時点で難なくQ1突破が確認できていたこともあり、タイヤを温存するためアタックを終了。チェッカーまで5分を残してピットに戻るも、その後タイムを上回る者は現れず、上々の滑り出しとなった。
公式予選 Q2 7月23日(土)15:25~15:37 GT500のQ1で赤旗中断があったため、Q2は当初の予定より10分遅れでのスタートとなった。中山選手からバトンを託された嵯峨選手は、しっかりインフォメーションを受けて同様にウォームアップを3周行ってからのアタックに。それぞれ1周終えた頃、コースの一部に雨が落ち始めるも、焦りは禁物。最初のアタックで嵯峨選手は1分17秒995をマークして、その時点でのトップに浮上。もう1周アタックに向かうも、そこでの短縮は果たせず、1分を残してピットに戻る。
だが、その後に一台の逆転を許してしまうも、他に17秒台の壁を越える者はおらず、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はフロントロー、2番手グリッドから決勝レースに挑むこととなった。
決勝日・フリー走行 7月24日(日)9:00~9:30 夏休み最初の日曜日ということもあって、早朝からサーキットには多くの観客が集まり、最終的には29,500人をおさめることとなった。そんな活気とは裏腹に、フリー走行が始まる頃の路面は未明に降った雨によって、しっとりウェット状態。そればかりか霧雨まで舞っていた。中にはドライタイヤを最初に試したチームもあったが、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はウェットタイヤをあらかじめ装着して嵯峨選手をコースに送り出す。
1コーナーでタイヤの温まりが早いダンロップタイヤの#61 スバルBRZの先行を許すも、遅れることなく続き「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はオープニングラップを3番手でクリア。その後も激しいトップ争いを繰り広げる。
6周目に入るとトップの#25 86MCが逃げ始めるも、その後もしばらく2番手争いは激しく繰り広げられた。レースが再び緊張感を取り戻したのは24周目。最終コーナーでクラッシュがあり、セーフティカーがコースインしたからだ。28周目にセーフティカーが戻り、ピットロードがオープンとなると、すかさず「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はピットイン。中山選手へドライバー交代とともに、スタート時よりも固めのタイヤをチョイスし、4本すべて交換してピットアウト!
しかし、相手はタイヤ無交換の車両。FIA-GT車両の特性を生かしストレートが速く、1コーナーでのフルブレーキングで必死に堪えるも、もはや「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」に及ぶところではなかった。63周目の1コーナーで、中山選手は満を持してトップに立つ。そこから先は着いてくる者も現れず、逃げ続けることとなった。71周目の最終コーナーでクラッシュがあり、赤旗が出されて本来の予定より5周早い終了に。チェッカーフラッグこそ受けられなかったが、待望の今季初優勝。
そしてZVW50型プリウスにとっての初勝利を飾ることとなった。
勝利の美酒に酔いしれた嵯峨選手と中山選手、感動に包まれていたaprのスタッフながら、そう長く余韻に浸ることは許されない。というのも、2週間後の8月6~7日には富士スピードウェイで第5戦が行われるからだ。今年のGT300はポイントが例年になくばらけていて「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は、これでドライバーランキング3位に浮上。第6戦の鈴鹿も含んだ真夏の3連戦で多くのポイントを稼げば、まだまだ王座獲得のチャンスは残される。荒稼ぎに期待しよう。