6月18~19日に開催された第84回ル・マン24時間耐久レースで、首位を快走しながらもストップした5号車トヨタTS050ハイブリッド。サーキットはもちろん、テレビ等で見守っていたファンにとっても信じられない瞬間だったが、その後なんとか1周をこなした5号車の順位が何位だったのか、その時点では情報が錯綜した。
最終的に、リザルトに表示されたアンソニー・デイビッドソン/セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴組5号車トヨタTS050ハイブリッドの順位は『Not Classified』。5号車はコントロールライン付近にマシンを止めた後、一貴はなんとか5号車を再始動させ、1周してチェッカーを受けたため、リザルトについた周回数は384周。優勝した2号車ポルシェ919ハイブリッドも384周で、結果的に2位となった6号車トヨタは381周だった。(この詳細は発売中の『ル・マン24時間 2016』内の中嶋一貴インタビューを参照)
結果としては、一貴が5号車を再始動させてから、チェッカーを受けるまでにかかった時間が11分53秒かかってしまったため、ル・マン24時間のみに適用される“特別規則”に抵触してしまったことにより、順位がつかない扱いとなった。
今回5号車トヨタが抵触したのは、特別規則のうちのひとつで、『最終ラップは、スタート/フィニッシュラインから、次にスタート/フィニッシュラインを横切るまで、またはピットレーン出口からスタート/フィニッシュラインまで、6分以内に通過しなければならない。ただし、オフィシャルにより“不可抗力”と認められた場合はこの限りではない』というものだ。
この規則は数年前に加えられたものだが、ル・マン24時間を主催するACOフランス西部自動車クラブのスポーティングディレクターを務めるヴァンサン・ボメニルは、規則の理由について「安全のためだ」と説明した。
「レースが終わる頃に、完走に必要な距離を走っているクルマがピットから出てきて、チェッカーフラッグを待つためにトラックの端に停まることがあったんだ。それは他のドライバーにとって危険なものだ。命に関わる場合すらある」
「したがって、ACOでは車両がゆっくりとファイナルラップをこなすことは可能にしているが、トラック上に停まって待つことを防ぐために、最終ラップの制限時間を設けることにしたんだ」
また、ボメニルは『オフィシャルにより“不可抗力”と認められた場合』という条文に5号車トヨタが当てはまらないのか? という問いに対し、こう答えた。
「不可抗力という状況は、競技者にとってどうにもできない状況のことを言う。例えば、とんでもない嵐のときや、トラック上に動物が飛び出してきたようなときだ」
「故障は“不可抗力”には認められない。それはチームの責任だ」