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『ONE PIECE』新作、今年最高の初日興収記録 しかし、夏休み映画の敵は『ポケモンGO』!?

2016年07月27日 16:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『ONE PIECE FILM GOLD』(c)尾田栄一郎/2016「ワンピース」製作委員会

 本格的な夏休み興行に入ってから2週目となる先週末。全国739スクリーンで『ONE PIECE』長編劇場版13作目『ONE PIECE FILM GOLD』が公開され、オープニング2日間で動員82万830人、興収11億5577万1000円を記録。『ファインディング・ドリー』から1位を奪った。


参考:『ONE PIECE FILM GOLD』が描く世界の複雑さと、ルフィたちのシンプルな輝き


 ほぼ途切れなく毎年新作が製作される他のアニメの人気シリーズの映画版と異なり、『ONE PIECE』映画版の公開は不定期(本作は2012年12月に公開された『ONE PIECE FILM Z』以来、約3年半ぶりの作品)。サマー・シーズンに公開されるのも今回が初めてのことだったが、フタを開けてみれば初日の土曜日は動員47万8528人、興収6億7517万6000円と、今年公開されたすべての作品の中でもナンバーワンという数字を叩き出すことに(ちなみに土日2日間の成績では今年4月公開の『名探偵コナン 純黒の悪夢』の12億0915万8900円に及ばなかった)。今年のゴールデンウィークには『名探偵コナン 純黒の悪夢』vs『ズートピア』の日米アニメ対決に注目が集まったが、この夏もまた『ONE PIECE FILM GOLD』vs『ファインディング・ドリー』という日米アニメのデッドヒートが繰り広げられることになりそうだ。


 もっとも、『ONE PIECE FILM GOLD』の前作『ONE PIECE FILM Z』の初動(オープニング2日間)の興収は13億7205万円というすさまじいものだったから、正月興行と夏休み興行の違いはあるものの『ONE PIECE』新作の記録はそれに2億円以上及んでいないことになる。また、先週も指摘したように、好調の『ファインディング・ドリー』も、前作『ファインディング・ニモ』ほどの爆発的なヒットには至っていない。『ONE PIECE FILM GOLD』vs『ファインディング・ドリー』の争いは、数々の入場者特典を繰り出していく前者と、自力に勝る後者、という構図になることは間違いのないところだが、いずれにせよ現時点ではちょっと物足りないというのが正直なところだ。


 その背景の一つに、先週金曜日に突然配信が開始された『ポケモンGO』の影響を見るのはそれほど的外れなことではないだろう。『ONE PIECE』も『ファインディング・ドリー』も、観客層の中心は、年に0回か1回か、多くて2回くらいしか劇場に足を運ばない層である。いわゆる「映画ファン」と違って、そういう層にとっての映画は、テレビやテーマパークやゲームとフラットに存在する、数あるエンターテインメントの一つに過ぎない。メディアであれだけ話題を独占されてしまっては、パブリシティの面だけを考えても、悪影響は必至だろう。


 ただ、その『ポケモンGO』ブームも果たしてどれほどの持続力を持っているかは未知数だ。ちなみに、筆者は現在、夏休み休暇でハワイ島に滞在していて、息子と一緒にスマホ片手にモンスターを集めている真っ最中なのだが(もちろんハワイ島にもポケストップはたくさんあるし、モンスターもたくさんいる)、そんなことをやっているのは自分たち親子だけ。町に出ると「まだ『ポケモンGO』なんてやってるのか」的な周囲の冷たい視線を感じる。ニューヨークのような大都市とリゾート地の田舎町では事情が違うにせよ、先行配信から3週間以上経って、「もしかして、アメリカでは一瞬にしてブームが過ぎ去ってしまっているのでは?」と実感せずにはいられないのであった……。(宇野維正)