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ポスト染谷将太!? 17歳の“非目力系”俳優、清水尋也のグレーな存在感と色気

2016年07月27日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 俳優、清水尋也をご存知だろうか。1999年生まれの現在17歳。2014年『渇き。』では“ボク”役を演じ、痛々しいほどにいじめられていた少年だ。その翌年に公開された『ソロモンの偽証』では一転、同級生を容赦なくいじめる大出俊次役を熱演し、暴力で周りを支配する不良となった。この真逆の役柄を鮮烈に演じきった清水は、その名と顔を世に知らしめ、一躍話題に。


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 今年公開された『ちはやふる』にも出演しており、キネマ旬報8月号では「スクリーンで逢いたい若手俳優 男優篇」にて菅田将暉、柳楽優弥、神木隆之介、坂口健太郎、太賀、村上虹郎と並んで紹介されるほど、今、最も注目されている若手俳優の一人だ。


 先ほど述べた『渇き。』で“ボク”こと清水が登場した瞬間から、今にも消えてしまいそうな危うい雰囲気に、目が離せなくなった。中学生にとって“学校”は全てだ。そんな狭すぎる世界で心身ともに暴力を受け、真っ赤に染まった顔面で廊下を歩く姿には思わず目を背けた。いじめを受ける者にとって、学校生活という毎日は地獄以外の何物でもないだろう。ギリギリの淵で生きている“ボク”が、それ以上に底のない絶望に向かって、どんどん、どんどん、墜ちていく。同時に、心身ともに壊れて滅茶苦茶になっていく姿が、あまりにリアルで、ものすごく痛い。当時、実際に中学生だったという清水が持つ、“非目力”ゆえの現実感。10代ならではの繊細さを表しつつも、どこか達観したような大人びた雰囲気をも思わせる清水の目に、惹きこまれる。


 “非目力系”俳優とは、生気のない死んだ目ができる俳優のことを言い、新井浩文や池松壮亮などがあげられる。そして、染谷将太もその1人だ。清水は、2015年に放送された『連続ドラマW 天使のナイフ』(WOWOWプライム)がおこなった当時のイベントで「僕はこの仕事を続けていこうって決心したのが『ヒミズ』('12年)で。その主演の染谷将太さんが目標です!」(引用:エンタメ清水尋也「ヒミズ」共演の染谷将太への愛を語る!?)と話すほど、染谷に対して強い憧れを抱いている。キネマ旬報8月号のインタビューでも人生を変えた映画は『ヒミズ』と『ピンポン』で、染谷は特別な存在だと話した。また、「人には色があると思っていて。僕が好む人は、全員グレーなんです。人としてのカラーというよりは、お芝居の色。真っ白すぎず、どっか汚れている。何か黒ずんでいるけど、真っ黒じゃない」と語っている。染谷は、飄々としている印象を与えるのに、どの作品の中でも一際存在感を放つ役者だ。


 同様に清水もまた、異様な存在感だ。透明感溢れているのに、一筋縄では行かないような力強さ。10代らしい儚さと10代らしからぬ独特の色気。濁りと曖昧さを放つ清水の“非目力”には、不思議な魅力がある。


 キネマ旬報8月号で清水は「自分に満足していないし、ただ成長したい。どんなに泥臭くても、ダサくても、情けない姿を見せても、絶対、完成した作品を観た人の頭に一番残るのは俺だぞ、俺であってみせるぞと。チャンスをいただけたら、それを確実にものにして、自分という役者のよさを観る人にわかってもらえれば本望です」と明かしており、その言葉からも伝わるように、とにかく負けん気が強い。そんな、お芝居に対して真っ直ぐに向き合い、全力で挑んでいく清水のこれからの活躍が楽しみで仕方ない。(文=戸塚安友奈)