F1ハンガリーGPのレース終了後の会見で、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表が「ルノーのパワーユニットはメルセデスに対して、35kW劣っている」と発言した。同チームは今季「タグ・ホイヤー」名義でルノー製のパワーユニットを使用している。
「ルノーは素晴らしい仕事をして、パワーユニットは昨年より大きく前進した。しかしルノーのスタッフによれば、メルセデスに対して35kW足りていない」
1kWは約1.3596馬力に相当するため、ホーナーのコメントが正しければ、ルノーのパワーユニットはメルセデスに対して約47.5馬力は劣っているということになる。
47.5馬力をラップタイムに換算すると、どれくらいの差となるのだろうか。あるエンジニアに聞いたところ「マシンが持っているダウンフォース量によって異なるため一概には言えないが、総じて10馬力で平均およそ0.19秒」だという。平均というのは、パワー感度がコース特性によって異なるためだ。
たとえば全開時間が最も長いモンツァでは、10馬力の違いがラップタイムに与える影響は0.28秒と平均値よりも大きくなる。逆にパワー感度が小さいモナコでは10馬力で0.1秒と平均値の約半分になってしまう。そのエンジニアはハンガロリンクの値は教えてくれなかったが、鈴鹿が0.16秒であること、そしてハンガロリンクが「ガードレールのないモナコ」と言われていることを考えると、0.12秒くらいではないかと予測できる。となると、47.5馬力の違いは、約0.57秒の差となる。
マシンのポテンシャルは予選Q3のパフォーマンスに現れるが、今年のハンガリーでは最後のアタックでイエローフラッグが出たため、実力がわかりにくかった。
そこでQ3の1回目のタイムで比較すると、メルセデスを搭載するルイス・ハミルトンの1分20秒108に対して、ルノーを積むレッドブルのダニエル・リカルドは1分20秒280。その差は0.172秒。35kW=47.5馬力=0.57秒よりもギャップが小さかったのは「モナコ同様、ハンガロリンクのような低速サーキットではレッドブルのほうがダウンフォースが出ている」(フィル・チャールズ/トロ・ロッソのチーフレースエンジニア)からだろう。
Q3の1回目でハミルトンとフェラーリのセバスチャン・ベッテルのタイム差は0.766秒。しかし、フェラーリのパワーユニットがルノーに大きく負けているとは考えにくく、そうなると車体側の性能でフェラーリがメルセデスやレッドブルに後れをとっていると考えられる。
ルノーはパワーユニットに関して、今シーズン中に大きなアップデートはないと語っている。しかし、ホーナーは「燃料やチューニング、ドライバビリティを良くすることでもパフォーマンスは上げられる。車体とのハーモニーを、より良くすることでもギャップを縮めることは可能だ」と語っており、2016年の戦いを、まだあきらめていない。
「レッドブルにとって、次のチャンスはシンガポールだ」と、狙いを定めている。