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レースで戦う世界的企業の重役:GTアジア、タイのピティ・ピロムパクディに聞く

2016年07月26日 10:51  AUTOSPORT web

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GTアジアに参戦中のチーム、TP12のピティ・ピロムパクディ
スーパーフォーミュラ第3戦富士で併催開催となたGTアジアの富士ラウンド。岡山に続いて今季2度目の日本開催となったこの富士の第7戦で見事優勝を飾ったのが、12号車Ferrari F458 GT3を操るSINGHA MOTORSPORT Team、ピティ・ピロムパクディとカルロ・ヴァン・ダムのコンビだ。


 ヴァン・ダムはご存じ、2008年の全日本F3チャンピオンであり、その後はスーパーGTで活躍した日本のモータースポーツファンにも馴染みの深いオランダ人ドライバー。もうひとりのピロムパクディはなんと、世界的企業、タイのシンハービールの副社長だという。タイ人でもあるピロムパクディはどうしてGTアジアに参戦しているのか。ビジネスとモータースポーツの関係について、富士で聞いた。



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──まず最初に、ピティ・ピロムパクディさん(以下、ピティ)のレースキャリアについて教えてください。
ピティ:私は子12才の時にレーシングカートを始めました。その後オートクロスというレースに参戦し、海外留学をした際はツーリングカーでサーキットレースに出場しました。マカオGPにも出たのですが、30歳頃いろいろと理由があって2、3年レースから離れていたのです。でも、やっぱりレースがやりたくて、ポルシェのGTカーでレース活動を再開し、現在はフェラーリでGTアジアに参戦しています。ですから、レースキャリアは25年ぐらいになりますね。



──ピティさんは、シンハーのシニアバイスプレジデント(=日本での副社長クラスに相当)でもありますが、あなたがレースに出ることは会社にとってどのような意味があるのでしょうか?
ピティ:シンハーとモータースポーツは昔から深く、そして強く結びついています。これまでも、多くのモータースポーツイベントのスポンサーをつとめてきました。私にとってレース参戦は単なる趣味ではありません。レースで良い結果を出すことができれば、それは会社のイメージアップにもつながりますし、私はそこにも情熱を注ぐ価値を感じています。



──レースという、危険を伴うスポーツに重役であるあなたが出場することに対し、社内から反対の声は上がりませんか?
ピティ:それはないですね。どのようなスポーツにも危険は伴います。例えばゴルフだって、プレー中に命を落とすことがありますから。必ずしもレースだけが危険というわけではないと思っています。そして、このGTアジアに出場しているチームの代表は、その多くが会社の経営者なんですよ。余談ですが、私の家族はモータースポーツのファンで、父も昔レーシングカートをやっていました。



──経営者であり、チームオーナー、そしてレーシングドライバーでもあるピティさんから見て、レース活動と会社経営に共通する部分はありますか?
ピティ:会社経営とレース活動は、どちらも最初にきちんとしたコンセプトを決める必要があります。時間、体制づくり、そしてチーム内の円滑な人間関係。すべての要素をきちんと揃えて、それをうまく回していかないと良い結果は出ない。また、私自身はドライバーとして、自分よりはるかに速い選手と一緒に走ったり、戦ったりすることで実力を高めようと常に努力しています。それは会社経営も同じで、どれぐらい高い目標を設定し、いかにそれをコンプリートするかが重要なのです。レースも商品もベストを尽くさなければ、より良い結果を得られないという考え方ですね。





──ピティさんは去年GTアジアの富士ラウンドで優勝していますが、富士スピードウェイに対してはどのような印象をお持ちですか?
ピティ:私は、富士スピードウェイを自分のホームのように思っているんです。とても良い雰囲気ですし、富士に“戻って来る”と、とても幸せな気分になります。サーキットだけでなく、この周りのホテルやレストラン、そして出会う人々も好きなんです。もちろん、富士スピードウェイのコースも気に入っていて、ドライでもウエットでも楽しく走ることができます。



──日本という国を気に入られているようですが、どのような部分がお好きなんでしょうか?
ピティ:私は日本の人たちが好きなんです。日本人はマナーを守るし、真面目で、私にはすべてが完璧に思えるんですね。日本人は自分自身に対して真面目ですし、他人に対しても真面目に接する。それは、とても良いことだと思います。



──現在ピティさんはGTアジアに参戦してますが、このあと他のレース、例えば、スーパーGTなどに出たいという気持ちはありますか?
ピティ:GTアジアでもっと頑張らなくてはならないという思いがある一方で、アジアン・ル・マンやスーパーGTにも興味があります。今後どのレースにどれくらい出るかはこれから決めますが、やはり良い結果を出すことがもっとも重要です。ですので、良いチーム、良いファミリーを作りあげることが大事だと考えています。そして、私自身もいろいろな経験を積んでもっと速くなり、チームとしてさらに強くなりたいですね。



──3年後にどのようなドライバーになっていたいですか?
Piti:私は現在36才ですが、3年後は自分にとって一番ピークになる年だと思っています。これからの3年間は私にとってゴールデンイヤーで、アジアのドライバーとして40歳ぎりぎりまでアクティブに頑張りたいですね。



──誰か、憧れのドライバーはいますか?
ピティ:アイルトン・セナを尊敬しています。彼は世界中の多くの人にとって憧れの存在だったと思いますが、私も彼の大ファンでした。彼は超一流のスポーツマンであるだけでなく、ジェントルマンであり、ビジネスの世界でも成功をおさめた。他にも優れたドライバーはたくさんいますが、彼ほどすべてが完璧だった選手はいないと思います。また、人間的にもとても魅力がありました。



──ところで、ピティさんにはファンクラブがあるとお聞きしたのですが?
ピティ:はい。タイでモータースポーツはとても人気があり、実際にサーキットでレースを観戦する観客がとても多いんです。テレビで見るよりも実際に見た方が楽しいですからね。そして、彼らは私たちのことも応援してくれています。「We are Thai」というグループを作り、毎回多くの人が応援に駆けつけてくれます。メンバーにはタイ人だけでなく、ラオスや他の国の人も多く含まれています。今回の富士にも多くのファンが来てくれましたが、クラブ全体としては4万7000人ぐらいメンバーがいまして、そのうち6割ぐらいが私個人のファンのようです。



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 GTアジアはピティ・ピロムパクディを始め、アジア圏の各国企業の経営者や重役が多い、ジェントルマン・ドライバーの多いシリーズ。そして彼らが憧れるのが日本のサーキットであり、スーパーGT300クラスなのだという。スーパーGT300クラスにもGT3マシンが数多く参戦しているが、このクラス、そして東南アジアへの影響は、今後もますます、大きくなりそうだ。