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別居中の夫が保育園を訪れ、子どもを「連れ去られた」! 妻がやり返しても問題ない?

2016年07月26日 10:12  弁護士ドットコム

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「別居中の連れ去りをやり返したらどうなる?」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、子どもをめぐり、別居中の夫との関係に悩む女性からの相談が寄せられました。


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相談者が夫に黙って子どもを連れて実家に帰った4日後、夫が「母親が子どもを置いて出て行ったので俺が育てる」と嘘をついて保育園から息子さんを連れて帰ってしまったそうです。警察に説得をしてもらっても、相談者は子どもに会うことができていないそうです。


相談者は、もし自分が対抗措置として、勝手に保育園から子どもを連れ帰ったら、審判や親権争いで不利にならないか気にかけています。また、親子間のこととはいえ、連れ去りは犯罪になる可能性はないのでしょうか。下出太平弁護士に聞きました。


●やり返すと親権争いで不利になる可能性も


対抗措置として勝手に保育園から子どもを連れ帰った場合、親権争いで不利になる可能性があるかどうかについて結論的にいえば、不利になる可能性があります。また、親子間のこととはいえ、連れ去りが犯罪になる可能性もあります。


犯罪になるかどうかについていうと、判例(最高裁平成17年12月6日決定)において、連れ去りは態様によっては、親権者であっても未成年者略取罪が成立することが認められています。もちろん連れ去りの状況等によっては犯罪にならないこともありますし、すべて白か黒かで判断できるわけではありませんが、可能性は指摘せざるを得ません。


また、親権争いで連れ去りがどう判断されるのかということについてですが、大前提として、家庭裁判所は、親権を決める際、「どうするのが子供にとって一番の幸福か」という観点からしか考えません。その観点からみた場合に子どもの連れ去りがどのように評価されるのかということを考える必要があります。


両親が子どもを奪い合っている状況は、子どもにとっての幸福からはほど遠いものと考えられ、そのような状況を生み出している親を家庭裁判所が親権者として適格と判断することは、基本的にないといってよいでしょう。特に強引に奪っていくようなケースではその親を適格者と考えることはほとんどないと思いますので、親権争いで大きく不利になることは確実でしょう。


● 家庭裁判所でただちに手続きをとるべき


その一方で、保育園や幼稚園から連れ帰ることや、面会交流中に連れ帰るような場合は、正直ケースバイケースとしか言いようがありません。その行為によって親権者にふさわしいという積極的な評価がされることはないですし、少なくとも不利になる方向に傾くとは思いますが、他の判断要素との兼ね合いで親権者・監護権者として認められることもあります。


とはいえ、今回のケースを前提に考えると、すでに一度夫が保育園で嘘をついて連れ帰っているという状況ですから、同じ行為を相談者がするというのは子どもの福祉の観点からはかなりマイナスでしょう。


家庭裁判所においては、こういった場合、監護者指定の審判・保全処分や、子どもの引き渡しを求める審判・保全処分といった手続きが用意されていますので、今回の場合では、ただちにこの手続きをとるべきと思います。家庭裁判所がどのような判断をするかは分かりませんが、すでに夫が連れ去りを実行しているという点で、早期に申立をすれば、相談者に有利な状況にあるといえます。ただし、連れ去りから時間が経過し、夫の監護状態が継続してしまうと、それはそれで不利になっていきますので、早急な対応が必要かと思います。




【取材協力弁護士】
下出 太平(しもいで・たいへい)弁護士
取材協力弁護士 下出 太平 (しもいで たいへい)弁護士
2008年弁護士登録 愛知県弁護士会所属 都立戸山高校、早稲田大学社会科学部出身  離婚、交通事故、破産、相続、労働、中小企業法務、難民事件など幅広く取り扱う。 離婚、交通事故は電話相談を含め、数多くの相談を受けている。 趣味はバスケットボールで、現在も実業団でプレイ。
事務所名:西山法律事務所
事務所URL:http://www.lwo.jp