7月24日にスポーツランドSUGOで開催されたスーパーGT第4戦では、26周目に最終コーナーでマッハ車検 MC86がクラッシュしたためセーフティカーが導入された。SUGOでは2015年もセーフティカーが入り、レース展開を大きく左右することとなったが、このセーフティカーについて、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションの坂東正明代表は、来季に向けてフルコースイエローの導入を検討していると語った。
スーパーGTでは、2015年のSUGO戦でDENSO KOBELCO SARD RC Fがクラッシュし、その際に導入されたセーフティカーがピットウインドウと重なっていたため、ピットにマシンが殺到。ピット出口のマシンがファーストレーンを塞ぐ形になってしまい、ピットアウトするマシンによる渋滞が発生するという事態が起きた。
こういった事態を避けること、またマシンが殺到し、ピットレーン上の安全に関わる事態になることを避けるため、2016年からは新たにセーフティカー中にピットインした場合、ペナルティが課せられるレギュレーションが施行された。ただ、今季第2戦では給油のタイミングでSCが出動し、燃料が不足したS Road CRAFTSPORTS GT-Rがピットインしペナルティを課せられ、優勝争いから脱落するなど、新たな問題も噴出していた。
一方、WEC世界耐久選手権では、フルコースイエロー(FCY)システムにより、コース上でアクシデントが起きた場合、トラック上を走行しているマシンはすべて80km/hに速度を落とし、さらに深刻なアクシデントの場合セーフティカーを導入。なるべくレースを止めない工夫が為されている。また、ル・マン24時間ではスローゾーンという、区間によりスローダウンさせるシステムも導入されているが、FCYについては、スーパーGTでも導入すべきではないかという声が第2戦富士の後、多く聞かれていた。
このセーフティカー運用について、坂東代表は24日にSUGOで行われたGTA定例記者会見の場で、「フルコースイエローを、WECのものを参考にしていきたいと思っている」と導入を検討していると語った。現在、このシステム導入に向けて、GPSや携帯電話の電波を使ったものを、テストとしてRAYBRIG NSX CONCEPT-GTに搭載しているという。
ただ、FCYはレギュレーションとして単に導入すれば良いものではなく、コース上の車両の速度管理をはじめ、多額の費用が必要となってくる。一説には数千万円はかかると言われており、スーパーGT開催コースである7サーキットで運用できるシステムを導入するには、さまざまな費用がかかってくるはずだ。
また、GPSシステムを使ったり電波を使用したりするなかで、「これを40台につけたときに、お客様がいっぱいいるなかでしっかりと運用ができるかどうか。また、GT500とGT300が混走するレースのなかで、どう運用するか」とさまざまな検討課題があると坂東代表は語っている。
さらに、サーキットごとに異なるオフィシャルへの対応も課題だ。「基本的に、オフィシャルというものは各オーガナイザーの担当がついている。我々が入れる機械と連動しながらやるためには、コミュニケーションをしっかりととらないといけない。8大会を全部同じような人間が同じようなポジションにいて動かせるような状況を作っていきたい」と坂東代表。
WEC以外にも、ニュルブルクリンク24時間等のシステムを参考にしながら、「来年あたりには導入したい」と坂東代表は語るが、今シーズンについては、現行のレギュレーションはそのまま続行される。
安全とエキサイティングで公平なレースの両立は、現在世界中のレースで模索されている部分だ。インターナショナルシリーズとして発展しているスーパーGTの2017年シーズンに向けて、どんなレギュレーションが採られるのだろうか。