スーパーGT同様、平成28年熊本地震の影響を受けたオートポリスでの第5戦、第6戦は、それぞれ代替レースが富士、もてぎで行われることとなり、2カ月半ぶりのレース開催となったFIA-F4選手権。第3戦、第4戦で連勝の好感触を、その間も失ってはいなかった小高一斗(FTRSスカラシップF4)が第7戦でトップチェッカーを受けるも、3位でチームメイトの宮田莉朋(FTRSスカラシップF4)ともどもマシンに規定違反があり、失格の裁定が下される。繰り上げって初優勝を飾ったのは、大湯都史樹(エヴァRT弐号機tanzen Rn-s)だった。しかし、第8戦では小高がリベンジに成功、そして宮田と二度目となるワンツーフィニッシュを達成した。
土曜日のスポーツランドSUGOは、薄い雲に覆われてはいたが、程よい温度となって予選でのアタックには最適な条件に。開始早々に最終コーナーでクラッシュする車両があり、赤旗中断があったが、8分後には再開される。
FIA-F4はポイントリーダーが最初にコースインできる権利を持つため、本来ならば小高がもっともクリアラップを取りやすいはずが、この中断で少々難しい条件となってしまう。
それでもウォームアップの最中にポジションを整え、最初に小高が1分23秒台へと叩き込む。これを1/1000秒差で上回ったのが、金曜日までの専有走行でも好調だった大湯。いったんピットに戻ってタイヤを冷やし、再度アタックしようとしたが、「それが間違いだった」という。
走りながらクールダウンしていた小高が終了間際に再逆転、逆に大湯は再びコースに戻るも、タイムアップならなかったからだ。「ノーミスで走れました」と語る小高は、セカンドベストタイムも最速で、2戦連続ポールポジションを獲得。
驚くべくは、2戦ともにトップ4の順位は同じだったことだ。小高、大湯に続いたのは阪口晴南(HFDP/SRS/コチラレーシング)と宮田。そして5~6番手を石坂瑞基(HFDP/SRS/コチラレーシング)と高橋知己(点天&イーストアップwith Field)が分け合った。
第7戦決勝レースは、ほんのわずかに小雨が舞うなかでの戦いとなった。ウエット宣言は出されたものの、もちろん全車ドライタイヤを装着することに。フォーメーションラップを終えてグリッドに着いた阪口の様子がおかしい。クラッチにトラブルを抱えたマシンはピットに戻され、そのままリタイアとなった。その際にスタートディレイとなったこともあり、1周減算の14周での戦いに。
改めて切られたスタートは、大湯が鋭いダッシュを見せたが、小高をかわすまでには至らず。このふたりによるバトルが最後まで激しく繰り広げられるが、最後まで順位が入れ替わることはなかった。やや遅れて宮田が3位でゴールし、最終ラップに高橋が激しく迫るも、何とか振り切った石坂が4位に。
その後方の6番手争いも激しく、川端伸太朗(SUCCEED SPORTS F110)がリーダーとなって5台が連なり合った。しかし、11周目のSPコーナーインで川端は突然姿勢を乱してクラッシュ。これで平木湧也(DENSOルボーセFTRS)が前に出て、チームメイト川合孝汰(DENSOルボーセF4)の猛攻を最後までしのぎ抜いた。
「昨年、坪井(翔)選手が打ち立てた6連勝が当面の目標なので、まずは半分まで来ました」と3連勝を喜んでいたはずの小高ながら、正式結果がなかなか出ない。あたりも暗くなった頃に出された正式結果には、宮田ともども失格の文字が……。フロントウイングのステー加工が原因だ。
これにより、繰り上がって初優勝は大湯で、2位となった石坂はランキングのトップに。そして高橋が3位を獲得することとなった。「初優勝でも、繰り上がりでは複雑な心境ですね。何かが足りずトップでチェッカーは受けられなかったけれど、(小高に)着いていけたことで、実質的なスピードでは負けていなかったので、それを自信に次こそは」と大湯。
日曜日の午前中に行われた第8戦決勝レースは、未明に降った雨の影響で今季初めてウエットコンディションでの戦いとなった。
その雨がもう降らなかったなら、なかにはドライタイヤで挑んだ『猛者』もいただろうが、小雨が降ったりやんだりを繰り返していたこともあり、全車ウエットタイヤを装着。しかし、浅溝的にユーズドタイヤを用いる者も少なからずおり、その意味ではチョイスは分かれることともなっていた。
「動き出しは、明らかに僕の方が悪かった」という小高を抑え、最初に1コーナーに飛び込んでいったのは大湯だった。このふたりに阪口、高橋、川端、そして予選9番手の根本悠生(東京トヨペットGUNZE KCMG)が続いた一方で、宮田は出遅れてしまい、7番手へと後退する。
そんな後続の目まぐるしい順位変動を知ってか知らずか、早めに勝負に出たのは小高。最終コーナーが大湯よりも明らかに速いことから、2周目に入ってすぐ、スリップストリームから抜け出そうとする。しかし、大湯のガードも固く、また1コーナーで3周目から黄旗が出されていたこともあって、なかなか前に出ることが許されない。
しかし、黄旗解除なった6周目には、もうストレートで前に出ていた小高。その直後に最終コーナーでのクラッシュがあり、2周に渡るSCランがあっただけに、そこでトップに立てていなかったら、また展開は違っていた可能性もある。
リスタートを決めた小高に、もはや着いていける存在はなく、逃げる一方だったのに対し、逆に大湯のペースが鈍り始める。これはユーズドタイヤを装着していたからで、路面状態の急速な回復にマッチしなくなってしまったためだ。
徐々に順位を上げていた宮田が、まず大湯に12周目の最終コーナーで迫って2番手に浮上。次の周の馬の背コーナーでは、根本にもかわされていた。続いて襲いかかった平木は、何とか抑えた大湯だったが、表彰台は逃して4位でフィニッシュ。
「僕の方が速いという自信がありましたから、大湯選手に前に行かれても、まったく焦っていなくて。最終コーナーが実際に僕の方が速かったので、1コーナーで行けると思っていました。前回で連勝が止まったのは残念でしたが、ここからまた始めることとします」と語る小高は、ポイントリーダー返り咲きにも成功した。
「スタートでホイールスピンさせ過ぎたのが、いちばんの敗因です。でも、チームの名誉挽回のためにも、ワンツーフィニッシュできて良かった」と語る宮田が2位。そして3位の根本が「まだまだ、これから!」と巻き返しを誓っていた。