F1ハンガリーGPの予選でポールポジションを獲得したニコ・ロズベルグ。しかし、ロズベルグがハミルトンのタイムを塗り替えたとき、ダブルイエロー(黄旗振動)区間を走行しており、自己ベストを更新したのは疑問だという声が挙がった。
予選後、ロズベルグはメディアに対して「黄旗振動区間で大幅に減速した」と主張。しかしミーティングを終えても、なかなかメルセデスのエンジニアたちはトランスポーターから出てこなかった。広報担当が技術面を統括するパディ・ロウとメールを見ながら、深刻な様子で話し合い、不穏な雰囲気が流れていた。
レース審議委員会は土曜日の19時すぎに「19時45分よりロズベルグとメルセデスの代表者を呼び出し、状況説明を求める」と発表。19時45分にはトランスポーターから出てきたロズベルグをチームマネージャーのロン・メドウとチーフレースエンジニアのアンドリュー・ショブリンがメディアから守るようにして、ひとことも話すことなくコントロールタワーへと入っていった(トップ写真)。
それから約2時間後、レース審議委員会は「テレメトリーにより、ドライバーはターン8で大幅に速度を落としたことが確認された」と、ロズベルグを不問に付した。
しかし、疑問は残る。なぜ大幅に速度を落としたにもかかわらず、ロズベルグは自己ベストを更新できたのか。
第一の理由は、ロズベルグのトラックポジションだ。ロズベルグは最後のアタックを、かなり遅めに開始。黄旗の原因となったフェルナンド・アロンソがスピンした区間に到達するまでに時間があったため、ロズベルグが黄旗振動区間に到着したとき、すでにアロンソはマシンを立て直して走行を再開していた。そのため黄旗振動の影響が小さかった。
ロズベルグの前でアタックしていたドライバーの何人かはアタック自体を取りやめ、アタックをやめなかったベッテルも、自己ベストより2秒も遅かった。その時点では、アロンソがスピンした9コーナーに、まだマシンが止まっていたためと考えられる。
もうひとつの理由は、路面が大きく改善していたことである。ウエットコンディションで始まり、予選中に晴天となったため、路面は急速に回復していった。路面の改善による伸びしろはQ3終盤が最も大きかったと思われる。つまり、何もなかった1回目のアタック時より、一部の区間で黄旗振動されていたとしても2回目のほうがタイムの出る可能性があった。
というのも、最後のアタックで自己ベストを更新したのはロズベルグだけではなかった。バルテリ・ボッタスとニコ・ヒュルケンベルグもタイムを更新している。ふたりはレース審議委員会に呼び出されなかったが、もちろん黄旗振動区間で減速していた。黄旗振動区間で減速していても、状況によっては自己ベストを更新できたということだ。
予選でハミルトンとロズベルグの明暗を分けたのは、最後のアタックに出たタイミングと、一時は減速しながらもアタックをあきらめなかったロズベルグの執念だった。
ハミルトンはレース後にも、予選でロズベルグにペナルティが出なかったことに異議を唱えている。今回はウエット路面が急速に乾いていくという特殊な状況ではあったものの、黄旗振動のときに、どこまでスピードを落とすべきなのかということは明確にされるべきだろう。