2016年07月25日 10:32 弁護士ドットコム
ネット上でアンケートに答え、謝礼としてポイントをもらえる「アンケートサイト」。そのモニターとして獲得したポイントは、税務上どのように扱われるのかという相談が、税理士ドットコムの税務相談コーナーに寄せられた。
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相談者は、毎月給与をもらって生計を立てているが、副業としてアンケートに答えてポイントを稼ぐアンケートモニターをしている。貯めたポイントは現金や商品券に交換せずに、買い物に利用している。
実際に買い物に使えるポイントは、ある意味お金に近い役割を果たしているとも考えられる。アンケートモニターの対価として得たポイントにも、税金はかかるのか。島田弘大税理士に聞いた。
「現時点では、ポイントプログラムに関して法的に網羅的な整備がされているとは言えない状況です。
そこで、一般的には国税庁のウェブサイトに記載されている『企業が提供するポイントプログラムの加入者(個人)に係る所得税の課税関係について』(https://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/78/04/index.htm)が参考にされていますので、その考え方をもとに回答したいと思います」
島田税理士はこのように述べる。アンケートの回答して得たポイントは、どう考えればいいのか。
「給与所得者が副業として、アンケートへの回答を行い、その役務提供の対価としてポイントを付与された場合は、そのポイントを使用した時点で『雑所得』として課税されるべき、と結論付けられています」
ポイントでも課税されるという結論になるのは、なぜだろうか。
「まず前提として、ポイントを獲得することが、所得としてどのような区分に当たるのかという点を考える必要があります。
アンケートモニターの対価として得たポイントは、経済的利益として課税所得になると考えられます。所得区分としては、『事業所得』、『一時所得』もしくは『雑所得』が考えられます。
今回のケースでは、給与所得者が副業で行っているということなので、事業所得は除かれるでしょう。
家電量販店のポイントなどについては、役務提供の対価ではなく、法人から消費者への贈与として『一時所得』に該当すると考えられます。
一方で、今回のご質問のように、アンケートへの回答等という役務提供の対価として付与されるポイントについては、贈与ではなく、役務提供の対価として『雑所得』にあたると考えられます」
一時所得か雑所得かで、どう扱いが異なるのか。
「『一時所得』の場合は特別控除額(最高50万円)がありますので、少なくとも一時所得の合計が50万円を超えていなければ確定申告をする必要はありません。
一方、『雑所得』に当たる場合、1か所から給与の支払を受けている給与所得者であれば、給与所得と退職所得(退職金など)以外の所得の合計額が20万円を超える場合に確定申告が必要になります。
つまり、給与所得と退職所得以外の所得が、ポイント以外にまったくなければ、そのポイント付与による『雑所得』が20万円を超えない限り、確定申告をする必要はありません(ただし、給与の年間収入金額が2000万円を超える人は除きます)」
ポイントは、獲得してもすぐには使わずためているという人も少なくないだろう。ポイントを獲得した時点と、実際に使用した時点、どちらを基準に課税されるのか。
「『ポイントの使用時』であると考えられています。つまり、ポイントを付与された時点ではなく、ポイントを使用した時点で課税所得として認識すべきということです。
現金ではなくポイント付与という形で受け取るケースは今後益々増えていく可能性があり、ポイントプログラムに係る課税関係については注目される論点と思われます。
冒頭でも述べたとおり、現時点ではポイントプログラムについて法的に網羅的な整備がされているとは言えない状況であるため、課税関係についても解釈が分かれるケースも想定されます。今後の動向について注視する必要があると言えるでしょう」
島田税理士はこのように述べていた。
【取材協力税理士】
島田弘大(しまだ・こうた)税理士
早稲田大学商学部卒業。大手税理士法人、外資系証券会社を経て、シンガポールに移住。現地の会計事務所で日系企業の現地法人設立や海外進出支援、国際税務コンサルティングに従事。現在は主に中小企業・個人事業主に対して、国内税務に加えて国際税務顧問を行っている。
事務所名 : 島田&アソシエイツ国際税理士事務所
事務所URL: http://shimada-associates.com/
(弁護士ドットコムニュース)