2016年のスーパーGT第4戦SUGOの決勝レースは、終盤のGT300車両が最終コーナーでクラッシュによる赤旗で74周で終了。GT500はフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rが今季初優勝を飾った。
朝から雨模様となっていたスポーツランドSUGO。お昼前に一時止んで路面もドライコンディションに戻ったが、霧雨がぱらつく中でレースが開始された。
スタートでは順当に通過。WAKO’S 4CR RC Fのアンドレア・カルダレッリがスタート直後から順調に後続を引き離すが、GT300との混走に入るとKEIHIN NSX CONCEPT-GTが背後に接近。小暮卓史がプレッシャーをかけていった。
なんとか逃げたいカルダレッリだったが、6周目の1コーナーでGT300のイン側に入ったところで、GT300がアウトからターンインして2台が接触しスピン。ポールポジションから優勝も期待されたが、カルダレッリは13番手まで後退してしまった。
トップに立った小暮は、GT300の混走の隙を突かれZENT CERUMO RC Fの石浦宏明に一瞬インを突かれるが、ギリギリのところでブロックし順位を守りきった。
一方、3位以下の順位も大きな動きを見せる。au TOM’S RC Fはシーズン中のモノコック交換を行ったため10秒ストップのペナルティを受けて順位を下げ、4番手にRAYBRIG NSX CONCEPT-GTが上がる。
だが、RAYBRIGは12周目のレインボーコーナーでDENSO KOBELCO SARD RC Fのヘイキ・コバライネンにパスされ、その後は一気にペースダウン。タイヤのピックアップなどがあったようで、1周あたり5秒近く遅くなってしまい、後続のライバルに続々と抜かれていってしまった。
トップ争いにも波乱が起きる。16周目の馬の背コーナーで石浦がインに飛び込んだところを小暮がブロックした時に2台が接触。小暮はスピンを喫し、13番手まで後退してしまった。これでトップはZENT RC Fとなったが、2番手まで浮上したDENSO RC Fのコバライネンが好ペースで接近。GT300との混走もうまく使い、23周目の1コーナーでトップに浮上。その後も後続とのペースを広げ、自身のGTでの初優勝に向けて周回を重ねた。
レースも中盤に入ろうとした26周目、マッハ車検MC86が最終コーナーでスピン。グラベルにマシンを止めてしまったため、セーフティカー(SC)が導入された。昨年のSUGOでは、SC中に各車が一斉にピットインし大混乱となったが、今年はルールでSC中のピット作業は禁止となっている。しかし、27周目でドライバー交替ができるレース全体の3分の1を経過したため、30周終わりでレースが再開されると、6番手走行のフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rを始め、4台のマシンがピットイン。ここでフォーラムエンジニアリングはタイヤ無交換作戦を選択し、これが後半に向けて大きなアドバンテージを得ることになる。
一方、トップ争いはSCで差がなくなり、DENSO RC Fの後方には14番手からスタートしたWedsSport RC Fの関口雄飛が接近。どのコーナーでも積極的に並びかけ、ストレートエンドではブレーキング勝負で飛び込んでいくが、勝負どころを心得ているコバライネンは最終コーナ一の立ち上がりからストレートでイン側を徹底して譲らず応戦。アウトから並びかける関口とのサイド・バイ・サイドのバトルが何度も続く白熱した展開となった。
44周を終えたところで2番手のWeds RC Fがピットインし、関口から国本雄資に交替。一方、DENSO RC Fは46周終わりにピットへ。こちらは素晴らしいトップ争いを演じたコバライネンから、平手晃平にバトンタッチ。ピットを後にするが、背後にはフォーラムエンジニアリング GT-Rの佐々木大樹が接近。DENSO RC Fはアウトラップでタイヤが温まっていないこともあり、レインボーコーナーを抜けたところでトップを奪われてしまう。
しかしその後、タイヤが温まると平手もペースアップ。すぐに追いつき佐々木に勝負を挑んでいった。平手は馬の背コーナーで並びかけようと接近する。一時は押され気味だった佐々木だが、徐々にペースを取り戻し2.7秒まで平手との差を広げる。
これで決まりかと思われたが、残り11周というところで平手が再び接近。さらに3番手のZENT RC F立川祐路と4番手のWAKO’S RC F大嶋和也、そして5番手のWedsSport RC F国本雄資も追いつき、残り10周を切ってトップ5台が2.5秒以内で優勝をかけてバトルをするという、SUGO戦では前代未聞の混戦になった。
そして残り6周、佐々木が最終コーナーでGT300に引っかかったところを平手が抜きにかかり、そこに3番手の立川も加わり、一瞬3ワイドになりかけそうなバトルになった。佐々木はトップを死守したが立川が平手を1コーナーでパスし2番手に浮上。その直後に最終コーナーでアップガレージ・バンドウ86の山田真之亮が大クラッシュ。76周目に赤旗が出された。幸いドライバーは無事で自力でマシンを降りていた。
赤旗により、ストレート上に両クラスのマシンが分けて停車。レース再開について協議されたが、選手権ポイントがフルポイント与えられる条件である全体の75%を超えていたこともあり、そのままレース終了。フォーラムエンジニアリング GT-Rが今季初優勝を飾った。なお赤旗によるレース終了の場合は2周前の順位が採用されるため、2位はDENSO RC Fでコバライネン/平手組で前回に続く2位表彰台。3位はZENT RC Fとなり、立川のオーバーテイクは幻となった。
KONDO RACINGにとっては、昨年の第4戦富士以来となる優勝。タイヤ無交換の大英断を下した近藤真彦監督も「SC中にドライバーとヨコハマタイヤのエンジニアと相談して、最終的には僕が決めました。本当にタイヤもよかったし、ふたりのドライバーが本当に素晴らしかった」と満面の笑みをみせると、佐々木は「監督のギャンブルは良く外れるので」と突っ込み、近藤監督も爆笑するシーンが見られた。
今年のSUGO戦はスタートからレース終了まで、とにかく抜きつ抜かれつの目まぐるしい展開で、例年以上に緊張感の高いレースとなった。