アルゼンチン人ドライバーとして2014年にシリーズフル参戦を果たして以降、WTCC世界ツーリングカー選手権で記録的な活躍を演じたホセ-マリア・ロペス。2年連続王者の偉業を提げて、この10月からはフォーミュラEにも参戦することが決定しているが、彼が一線級のドライバーとして地力を養ったフィールドこそが、アルゼンチンを舞台とするツーリングカー選手権だった。
そのキャリアの大半でシングルシーターをドライブしてきたロペスだが、WTCCにおける戦績は63戦27勝、ポールポジション18回、ファステストラップ24回、獲得ポイント1216と、突出している。その彼が世界戦登場前夜に戦っていたのが『スーパーTC2000』だ。
隣国の『ストックカー・ブラジル』や、アルゼンチンの『TOP RACE V6』と並んで、長らく同国を代表する選手権だった『TC2000』から2012年に派生する形で設立された同選手権は、2000ccクラスのエンジンを使用し、電子制御デバイスや大幅なディメンション変更を禁じたグループN規定に近い成り立ちのTC2000マシン勢と異なり、「南米で最も進んだモータースポーツ選手権」を標榜し、当初はイギリスの企業が手がけた11000回転で430馬力以上を発生するオリジナルのV8を搭載する計画でスタート。その後、サプライヤー離脱・変更の紆余曲折を経て、現在はリッターバイクの雄であるスズキ製スーパースポーツ『隼』の1350cc直列4気筒をベースにV8化した、2700ccの超軽量エンジンを搭載。Xトラック製の6速共通ギヤボックスを採用している。
また空力の面でも細かな規則が設けられ、ボディワークは前後バンパーとサイドシル部の変更のみが許されるほか、全長や全高なども車種ごとに数値が定められている。
気になる参戦車種は、昨年の王者であるプジョー408(日本未導入)を皮切りに、現在ポイントリーダーのルノー・フルーエンス(メガーヌ・セダン)、WTCCでもおなじみのシボレー・クルーズ、さらにフォード・フォーカス(4ドア)、フィアット・リネア(グランデプント・セダン)、そしてトヨタ・カローラがエントリー。数年前まではホンダ・シビックも参戦していた。
今季は全13戦で争われ、WTCCの舞台にもなるテルマス・デ・リオ・オンドを筆頭に、母国の英雄『ファン-マヌエル・ファンジオ』の名を冠したロザリオのコースや、サンタフェの市街地、そしてF1も開催されたブエノスアイレスでは、7月末にシーズン天王山の200kmレースが開催されるなど、多彩なコースが揃う。
ホセ-マリア・ロペスに続いてWTCCデビューが発表されたエステバン・グエルエリは、長らくトヨタ・チーム・アルゼンチンのワークスドライバーとしてカローラをドライブしてきた。その他の参戦ドライバーで国際経験があるのは、元F1ドライバーのノルベルト・フォンタナ程度だが、前出のブエノスアイレス200kmにはリカルド・ゾンタ、エスティバン・トゥエロ、そしてトム・コロネルらがゲスト参戦する予定となっている。