厚労省の就労条件総合調査によると、2014年の年次有給休暇の取得率は47.6%にとどまっている。政府の目標である7割には全く及ばないが、年間取得日数が「8.8日」と聞くと、意外に多いと感じる人もいるだろう。
どうやら世の中には、有給休暇をそれなりに消化している人と、ほとんど消化できない人がいて、その平均が「半数弱」という数字となっているようだ。今後の政府の対策は「まったく消化できていない人」に焦点を当てるべきではないか。
ブラック企業確実?「有休ゼロ」が18.5%を占める
人材サービスのマンパワーグループが20~59歳の男女400人を対象に、「あなたは2015年、有給休暇を利用して何日会社を休みましたか?」という調査を実施。7月20日に結果を発表した。
最も多かった回答は「10日」で21.8%を占めたが、次に多かったのは「0日」で18.5%にのぼる。11日以上と答えた人も13.3%おり、10日以上を合わせると35.1%。この数字は、3日以下を合わせた割合と同じである。
これを踏まえると、日本には有休を年に「3日以下しか取れない人たち」と「10日以上も取れる人たち」が、ほぼ同数と推測される。10日取る人に「もっと取れ」と促しても限界があることを考えれば、取得率アップには「3日以下」の人たちへの対策が必要だろう。
回答者に有休をすべて消化できなかった理由を尋ねたところ、男性では「仕事量が多いから」(31.5%)がダントツの1位。次いで「仕事を引き継げる人がいないから」(18.0%)、「他の社員に迷惑がかかるから」(16.5%)が続いている。
女性では「他の社員に迷惑がかかるから」(26.0%)と「病気や用事のために取っておきたいから」(24.5%)の2つが突出している。男女とも「他の社員に迷惑がかかるから」権利が行使できないと答えた人が上位に入っている。
「事実上の制度消滅」の会社に重点的な対策を
年に有休をまったく取れない人は、どんな働き方をしているのか。Yahoo!知恵袋には、ある工場で働く恋人を心配する男性からの相談が寄せられており、有休を一切取らせない会社の様子を垣間見ることができる。
恋人の女性は正社員として働き、相談の時点で5年目を迎えている。しかし入社以来、いちども有休を取ることができていない。取得の申請をしても、会社からは、
「いや無理。君がいなくなったら誰が入るの?」
などといわれて結局休めないという。有休の取得が「他の社員に迷惑がかかる」とされるゆえんだが、有休を全く取らせない会社の姿勢は、労働基準法に違反しているといってよい。
女性の姉が急死してしまったときの法事でさえも忌引扱いにならず、見かねた課長が「あまりにも酷すぎる」として、会社に掛けあってようやく有休扱いになった。
「たしかに製造業、いわゆる工場等では、『事実上の年次有給休暇制度の消滅』が多くあるようです」
相談者の男性は、諦めたようにこう綴っている。政府は7割の取得目標を目指すこともさることながら、このような形で「事実上の制度消滅」となっているブラック労働への指導を優先すべきではないだろうか。
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